集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法の成立から、19日で1年となった。県内の戦争体験者や母親たちはこの1年を振り返って「戦前の動きに似てきた」と語り、安保法の廃止などを求めた。一方で同法に賛成する立場からは、尖閣諸島を巡る情勢を挙げ「安保法がなければもっと厳しい状況になっていた」との意見もあった。
沖縄・民間戦争被害者の会の野里千恵子会長(80)は「安保法をなくさないと戦争になる。戦前の動きに似ていると感じ、落ち着かない」と不安げに話した。「採決から1年がたち国民の危機感が薄れている」と話した。「集会などで反対の声を上げても、実際に国会に届いているのか。辺野古の新基地建設や高江のヘリパッド建設の議論と同時に、安保法のさらなる議論が必要だ」と指摘した。
また、八重山防衛協会会長の三木巖さん(74)は「尖閣諸島に先日も中国から数百隻の漁船と公船が押し寄せた。領海侵入を繰り返し、既成事実化を進めようとしている」と指摘。安保法について「法整備を進めることで(中国の動きに)ある程度歯止めをかけられている。安保法がなかったら八重山の海、空はもっと厳しい状況になっていただろう」と強調した。
一方、安保法廃止を訴えてきた全国組織の「安保関連法に反対するママの会」と連帯し、昨年8月に発足した「ママの会@沖縄」。当初7人だったメンバーは、現在約65人となった。この1年で活動の形を変え、日常生活の中で周囲に働き掛け、認識を共有していく手法に重きを置いている。
メンバーの與那覇沙姫さん(31)=読谷村、保育士=は、強行採決以降も高江や辺野古で市民と警察の衝突を目の当たりにし「本当に戦争に近づいていると感じる1年だった」と振り返った。「今の政府は暴走し、対話の大切さを忘れている。国民一人一人がもっと歴史や安保法を理解する必要がある」と指摘した。
中心となって活動してきた城間真弓さん(38)=読谷村、保育士=は「悔しい1年だった」と述べ「できることをやってきたつもりだ。だが沖縄では米軍属の暴行殺人事件などがあり、人権無視を連日見せつけられている。厳しい闘いだが、子どもたちの未来が懸かっている。諦めることができない」と力を込めた。