那覇市の公設市場、建て替えへ 補償、客足に懸念も


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 老朽化による建て替えが計画されている第一牧志公設市場。那覇市は7日の市民説明会で、現在地に建て替える方針を示した。9月末には正式に決定する見通しで、市場再整備に向けた事業が本格的に動きだす。一方、工事中に一時移転する仮店舗については入居できない店舗が出る。その間の補償について市場事業者からは懸念する声も上がっており、市と事業者間で丁寧な議論が求められる。

 第一牧志公設市場は、1948年に市開南にあった市役所跡地に市が闇市の露天商人を収容したことが始まり。

 現在の建物は1972年に建て替えられた時の施設で、老朽化が進んでいた。2015年9月に市がにぎわい広場への移転案を提案。事業者側は、01年に閉鎖された第二公設市場と同じ場所への移転案であることや「市の説明不足」を理由に強く反発した。

 同12月から市場や周辺事業者による検討委員会と、識者などを交えた外部検討委員会を設置し(1)現在地での建て替えで工事期間中は営業休止(2)現在地で建て替えし工事期間中は仮店舗で営業(3)にぎわい広場へ新設移転(4)現在地で施設を耐震化を含めて大規模改修―の4案を検討した。両委員会とも(2)が多数意見となり、市も(2)を方針とした。

現在の那覇市第一牧志公設市場

 ■仮店舗への懸念■

 一方、一時移転場所での仮店舗には課題が残る。

 市は、当初計画していた2階建ての施設案は約12億円とコストがかかるため、約1・3億円の平屋に変更を提案した。その結果、入居できない店舗が発生する。

 一時移転中の補償について市は「これからどういう補償のやり方が適切かルール作りをする」とするが、事業者側は補償の中身が分からないまま市の方針とされることを懸念する。一時移転先となる「にぎわい広場」は、かつて経営不振で閉鎖した第二公設市場と同じ場所であるため、売り上げ面を不安視する声も。肉屋を経営する森山紹栄さん(60)は「生活がかかっているから。見切り発車が一番怖い」と懸念する。

 ■月末までに正式決定■

 市は防災の観点からも建て替えを進めたい考え。9月末までに建て替えを正式決定し、施設などの具体的な中身を定める基本計画を本年度中に完成させる予定だ。計画策定に当たっては事業者や外部識者との協議を続ける。公設市場の粟国智光組合長は「本格的な議論はこれから。他県の事例や公設市場のグランドデザインなども含めてしっかり議論したい」と話し、市場建て替えに向けて多面的な議論の必要性を指摘した。(田吹遥子)