反戦の魂 引き継ぐ むのさんしのびシンポジウム


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 【東京】第2次世界大戦中のメディアの在り方に対する深い反省に立って独自のジャーナリズム活動に取り組み、先月101歳で亡くなったむのたけじさんをしのぶシンポジウムが24日、東京都の早稲田大学大隈記念講堂で開かれた。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース主催で「むのたけじの魂を継承する」がテーマ。登壇者は、全力で戦争を止めようとしてきた彼の精神を引き継ごうなどと訴えた。約700人が詰め掛けた。

 琉球新報の宮城修社会部長はむのさんに「なぜ先輩新聞記者たちは戦争を止められなかったのか」と質問した時の回答を紹介。「軍部にしっぽを振った記者は1割だけで、9割は何もしなかった。戦争に突き進む段階では無力になる。戦争と戦うのであれば、戦争を起こさせないことだ」という彼の言葉を挙げ「この精神を皆さんと共有したい」と強調した。

 桂敬一・元東京大学教授は「むのさんの活動のやり方や精神は現在の市民運動にも生かせる。若い人々は受け継いでほしい」と訴えた。評論家の佐高信さんは、戦争に向かうような日本の閉塞(へいそく)的な状況を挙げ「むのさんは敵を打ち破るものとして言葉を使った人だ」と指摘した。ルポライターの鎌田慧さんは「彼は『記者自身がどう思い、主体的に物事の本質を捉え伝えるか』を大切にしていた」と話し「前人未到のジャーナリスト」と評した。

 進行役を務めた作家の落合恵子さんは「希望は絶望のど真ん中から生まれる」というむのさんの言葉を紹介した。