第66回県高校野球秋季大会は2日、コザしんきんスタジアムで準決勝が行われた。第1試合は第1シードの美来工科が那覇を8―1の八回コールドゲームで下し、前身の中部工業時代を含め初の決勝進出を決めた。第2試合は興南が知念を1―0で破って2年連続14度目の決勝進出を決めた。美来工科と興南は、来春の選抜大会(春の甲子園)の重要な選考資料となる九州大会(22~27日・大分県)の出場権を獲得した。
決勝は8日午後1時から同球場で行う。
美来工科は四回までに3―0とリードして主導権を握り、八回に古謝僚人の走者一掃の三塁打で試合を決めた。
興南は七回2死一塁から代走の里魁斗が盗塁し、悪送球が重なる間に本塁へ生還。エース上原麗男を軸に1点を守り切った。
◆美来工科/強気に攻め 堅守崩す
「自分たちの野球は好球必打」。美来工科の眞玉橋元博監督が語るように、攻撃的な姿勢を貫いた美来工科が那覇の堅守を打ち崩した。先発9人中8人が安打を放ち計12安打。初の決勝進出で、春秋通じて初の九州大会出場も決める1勝となった。
三回1死二、三塁、外角のストレートを捉えた山川倫輝の一打で先制した。さらに四回、安打に敵失も重なり1死二、三塁とし、暴投で2点を追加。先行して優位に立った。五、六回、相手投手の制球力に打線が沈黙したが、選手は「冷静に自分たちの野球をやっていこう」と声を掛け合い、気持ちを切らさなかった。
七回、連続四球で1死一、二塁とすると、2番・神山諒介が右中間方向へ安打を放った。野手の間に打球が落ちるのを見た三塁コーチャー・島袋海斗の好判断もあり、得点圏の走者が生還し加点した。眞玉橋監督が陰の殊勲者とした島袋は「いけると思ったから一気に腕を回した」と振り返る。
迎えた八回は、1点を追加した後の1死満塁で「最低でも1点を取る」と打席に立った1番・古謝僚人が、走者一掃の適時三塁打。九州切符をつかみ取る値千金の一打となった。
投ではエース山内慧がここまでほぼ1人で投げ抜く。主戦右腕は「隙を見せないことが課題だ。低めにコースを突いて抑えたい」と頂点を見据え、課題修正に余念はない。(崎原有希)
◆興南が底力発揮/勝負どころ 代走ずばり
興南が勝負どころで決断力を発揮し、まさに「ワンチャンス」をものにした。
六回まで相手エースに1安打と苦しみ、三塁にすら進めなかった。我喜屋優監督が「こういうゲームでは『仕掛ける時』がある」という場面がやってきたのは七回だった。
2死走者なしから4番・中山莉貴が左前打で出塁すると指揮官はすかさず代走に里魁斗を送った。里は、3ボール1ストライクの有利な状況から5球目に完璧な走りだしで二盗。捕手の送球がそれて中堅手の前に転がる間に次は三塁を狙うと、今度は中堅手が三塁に悪送球した。「センターが(定位置より)20メートルほど後ろにいたのも、ピッチャーのカバーが遅れていたのも見えていた」と里。大声援に乗って一気に本塁へ滑り込み、決勝点をもぎとった。
そしてもう一つのヤマ場は八回の守りだ。2死三塁で、一回に安打を打たれていた3番打者を敬遠し、4番との勝負を選択。エース上原麗男が「自信がある」という低めのスライダーで空振り三振に仕留め、一打逆転のピンチを阻止した。
息詰まる接戦を制した。九州出場を決めてなお、選手たちに緩みはない。昨年夏に県大会を制して以来、チームは頂点から遠ざかっているからだ。主将の福元信馬は「我慢強さとチームワークで勝ちたい」と力を込める。
我喜屋監督が「もう一皮むけてほしい」と臨むナインにとって、決勝は絶好の場になる。
(大城周子)
<きのうの結果>
▽準決勝
美来工科 8―1 那覇(八回コールド)
興南 1―0 知念
<8日の試合>
▽決勝
【しんきん】13時
美来工科―興南