戦争体験、朗読で継承 大城さん著書を劇化 平和継承へ思い


社会
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大城実元学長の沖縄戦体験を基にした朗読劇を上演する学生ら=17日、西原町の沖縄キリスト教学院

 沖縄キリスト教学院は、元学長で沖縄キリスト教平和研究所所長の大城実さんの戦争体験を基にした朗読劇「戦世に生きて-実少年の沖縄戦」を17日、学内で上演した。戦争体験の継承に危機感を覚えた職員の下地優貴子さんが、大城さんと、大城さんの亡き母・順子さんがつづった2冊の体験記を基に脚本を書き、有志の学生7人が演じた。学生ら約200人が聞き入り、平和継承への思いを新たにした。

 朗読劇では、人間性を失っていく戦時の惨状や、被弾し片足を失った大城さんが「あなたは1人しかいない。胸を張って生きろ」との言葉に励まされた様子を、言葉とわずかな動作で描き出した。

 下地さんが劇化に取り組んだのは「戦争体験者は80代、平和運動で目立つのは50代以上。20年後、声を上げる人はいなくなっているのでは」と感じたからだ。

 ことし大学を卒業したばかりで「教員が思っている以上に学生の知識は乏しい」との実感を踏まえて、平時から徐々に追い詰められていく当時の様子を具体的に分かりやすく描写した。

 さらに「辺野古の座り込みに誘われたけど、意見をはっきりさせるのは自分にはまだ早いと思う」「戦争は昔のことに感じる」という現在の学生の、生の声も盛り込んだ。学生の内面に寄り添いつつ、劇の最後には「平和について考えるのは他人ではなく自分自身」と語り掛け「自分の問題にしてほしい」と願いを込めた。

 出演した学生らは、せりふの背景となる状況を調べ、当事者の心や体の痛みを「想像して涙が出た」と、追体験しながら練習を重ねた。少年時代の実さんを演じた玉城里奈さん(22)=英語コミュニケーション学科4年=は「戦争は想像を絶する世界で、朗読以外の場でも頭をよぎるようになった。平和のためにどうしたらいいのか、いつも考えるようになった」と大きな経験となったようだ。

 「若い人の自発的な取り組み」と見守ってきた原作者の大城さんは「自分が残したものを若い人たちが自分なりに受け止め、自らの言葉で語っていた」と継承を喜んだ。