平和理念、沖縄遠く 憲法公布きょう70年 過重基地、人権を軽視


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 日本国憲法は3日、1946年の公布から70年を迎える。沖縄は1972年の日本復帰を経て、25年遅れてようやく憲法の効力下に入ったが、過重に集中する米軍基地の存在や辺野古新基地建設問題など新たな米軍施設の建設を強行する日米両政府の思惑に翻弄(ほんろう)され続けており、基本的人権を尊重するとした憲法の理念とは程遠い状態が続いている。

 沖縄戦で甚大な被害を受けたことや、戦後の米統治下で住民生活よりも軍事優先が続いたことなどで、県民は憲法の中心的理念である「平和主義」の実現を求めた。だが、沖縄で憲法が効力を持った72年以降も米軍基地の過剰な集中が続き、航空機墜落事故や殺人事件など、米軍絡みの事件・事故が相次ぐなど、本土と同等の平和が享受できない現状は解消されていない。

 さらに、今年10月には東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場のへリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設を巡り、大阪府警の機動隊員が抗議市民に「土人」と発言するなど沖縄差別の問題や機動隊による市民らの排除なども発生。憲法に規定される「人権」がないがしろにされる事態も発生している。

 沖縄大学の高良沙哉准教授(憲法学)は「沖縄の理不尽な状況は、権力者の憲法に対する無理解や無知のしわ寄せだ」と指摘する。改憲への動きが活発化している現状について「(公布から)70年という節目にやらねばならないことは、権力を担う側が憲法を学び、憲法に従うことだ」と強調した。

 憲法に対する県民意識について「これまで虐げられてきたからこそ、主権者としての意志を表明し、自分たちの力で政治を動かすといった憲法の基本的な理念が根付いている」と説明。「平和や人権の尊重を願う沖縄の人たちが憲法の効力をきちんと示していくことが重要だ」述べた。