「世之主伝説」解明に期待 沖縄・北山王の次男没後600年 鹿児島の沖永良部でシンポ


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意見交換する(左から)沖縄国際大の上原靜教授、新見公立大の原田信之教授、今帰仁村歴史文化センターの仲原弘哲・前館長=5日、鹿児島県和泊町

 【沖永良部で古堅一樹】琉球の三山時代に沖永良部島を統治していた北山王の次男とされる「えらぶ世之主」没後600年を機に、沖永良部島と沖縄のつながりを再確認する「えらぶ世之主没後600年事業」(同実行委員会主催)の記念シンポジウムが5日、鹿児島県和泊町立和泊中学校あかね文化ホールで開かれた。

進行役を務めるえらぶ郷土研究会の先田光演会長

 琉球のグスクとの共通性が注目される「世之主城跡」の城壁の復元や「世之主の墓」にある骨のDNA鑑定で性別や年齢などの分析が可能だとして、「伝承と考古学で発掘された事実が結び付き、新たな歴史が明らかになってくるだろう」との意見が上がるなど、世之主伝説の解明や活用に向け提言が相次いだ。

 シンポジウムは考古学、歴史、伝承の観点から専門家3人がそれぞれ基調講演した後、えらぶ郷土研究会の先田光演会長が進行役を務めて意見交換が行われた。住民ら約270人が来場し熱心に聞き入った。

 えらぶ世之主の居城とされる世之主城跡は従来、木々に覆われていたが、半年ほど前に伐採したことで、かつての城の形が見えるようになったという。

 考古学が専門の沖縄国際大学の上原靜教授は世之主城跡の城壁に関し「島内の石灰岩を集めて復元していくことは可能だ。ただし拙速に進めては駄目で、専門的な視点での復元をするように注意が必要だ」と指摘した。

 さらに上原教授は「世之主の墓」に葬られている骨について「時代(の特定)は難しいと思うが、男女や年齢、病気などが分かるのではないか」と指摘した。

 今帰仁村歴史文化センターの仲原弘哲・前館長は木々が伐採された世之主城跡に関し「具体的に見えて姿を現した。感動は大きい。(上空からの写真を基に)今帰仁城と非常によく似ている」と指摘。保存や活用へ向けて「これから大きな事業になる」と強調した。

 日本文学・伝承文学が専門の新見公立大学の原田信之教授は「世之主由緒書」などの史料と住民らに伝わる世之主伝説について調査したことを報告し「伝承と考古学で発掘された事実が結び付き、新たな歴史が明らかになってくるだろう。研究、調査が期待される」と述べた。