消える記憶 記録で補う 若年性認知症 大城さん体験語る


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「記憶より・記録」をテーマに講演する大城勝史さん(右)=10月28日、沖縄市民小劇場あしびなー

 【沖縄】「認知症 地域と共に」をテーマにした第13回県グループホーム大会(同連絡会主催)が10月28日、沖縄市民小劇場あしびなーで開かれた。昨年4月に若年性アルツハイマーの診断を受けた沖縄トヨペット社員、大城勝史さん(42)=豊見城市=が講演した。「記憶より・記録」をテーマに発症から現在の生活までを振り返り、認知症の知識普及と理解の促進に期待を込めた。

 大城さんは38歳の時に、記憶障害などが発現する「抗グルタミン酸受容体抗体脳炎」と診断された。その後、若年性アルツハイマーに診断が変わった時、予感はあったものの「やはりそうだったんだ」と打ちひしがれ「帰りの車中で泣いた」と当時の心境を語った。

 公表する際に気になったのが家族。「娘が一番心配だった」という。「変なイメージで見られないか。どんな影響があるか。娘に話すまでに2カ月かかった」と振り返った。

 病気は「消しゴムがゆっくり記憶を消してしまう感覚。感情のぶれが大きく家族に感情をぶつけるのが嫌だった。漠然とした不安感と恐怖。暗いトンネルの中を手探りで探す感覚だった。以降は一日一日を意識するようになった」と話す。

 現在の日課は携帯電話のアラーム機能などを使って行動をすべて管理する。アラームが鳴ったら確認の作業をする。出退勤の際は「行きと帰りは別世界。いつでも旅行気分」と話し、オリジナル地図やメモを必携する。自宅でも「ホワイトボードに行動記録を書き、時には手の甲にも書いて「常に過去の私からのメッセージ」を残す。

 こまめに休みを取らないと定時まで働くのが難しいが、勉強会などで職場の理解が進み、支えがある。大城さんは「怖いと思うのは当たり前。泣きたい時は泣けばいい。家族のため、自分のためにも頑張ろう」と自らを奮い立たせた。