那覇市内の保育園 急な増園、地域困惑 待機児童対策の15園新設 住民同意で熟議必要


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生活道の狭い保育園建設予定地=10月、那覇市古島

 全国の市町村で3番目に待機児童が多い那覇市。城間幹子市長は待機児童をゼロにする公約を掲げ、市は2017年度末までに保育定数2500人増を計画する。一方、そのために16年度は前年度の3倍に当たる15園を新設する「これまでにないペース」(市担当者)での増園が必要となり、地域住民や保育園側とのひずみも生んでいる。

■住民の理解

 那覇市古島では、住宅街に135人の園児を収容する保育園を建設する計画が進められている。道幅の狭い生活道に隣接していることから、交通渋滞や安全性を懸念する住民が反対運動を起こしている。

 市と園は6月までに住民説明会を7回開き、国道側から入る道を造って生活道を通らないことや、通園バスを導入して保護者の送迎を抑えることを約束したが、住民らは「決定ありき」と疑問視。国道側も一方通行の道とつながり混雑するとして対立は続く。

 もつれた最大の要因は、園側が地主など一部の同意で地域の同意を得られたとみなし、市が保育園建設の補助金交付を決定したことだ。

 実際、多くの住民は地鎮祭で初めて計画を知り、園側や市への不信感が募った。市は6月に補助金の交付要綱に「地域住民の同意」を新たに定めたが、古島の例にはさかのぼって適用できず問題解決はいまだ不透明だ。市の担当者も「どこまでの同意を必要とするか。自治会の組織率が低い中で難しいところもある」と課題を指摘する。

 ■保育士不足

 保育園の急増に対し、保育士不足に悩む保育園側も懸念する。那覇市園長会が10月に民間認可園を対象に実施したアンケートでは、認可園58園中約6割が保育士不足を指摘。近隣に新しい保育園ができた場合、保育士の引き抜きなどを危惧する園が14園あった。園長らは「ハコだけ建ててソフトの整備が追いついていない」と指摘。首里大名町地域では、現在の地域の子どもの数や、将来的な少子化も見据えて適正配置を求める声も挙がる。

 働くために保育園を必要とする親、保育園で働く保育士の不足、地域住民の生活―。12日の那覇市社会福祉法人立保育園保護者連合会のシンポジウムでは、備瀬知晶会長が「地域と保育園、保護者が交流する場所が必要だ」と提案した。3者間をつなぐ丁寧な議論こそが待機児童解消の近道かもしれない。
(田吹遥子)