土地評価額「下がる」 西普天間地区 市先行取得、地権者に説明


この記事を書いた人 新里 哲
返還され跡地利用が待たれる西普天間住宅地区跡地=9月2日、宜野湾市(小型無線ヘリで撮影)

 【宜野湾】宜野湾市が2014年に米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区の土地の先行買い取りをした際、事前の地権者説明会で跡地のうち宅地見込地について返還後、県道沿い以外は評価額が下がると説明していたことが23日までに分かった。評価額が下がる理由として市は区画整理事業による評価を加味していなかったと説明するが、13年9月の市議会で区画整理する方針を示しており、跡地利用推進特別措置法(跡地法)でも基地跡地は区画整理事業を行うことが前提となっている。

右下の「県道沿い」以外の宅地見込地は返還後に評価が下がるとする市の資料

 市は14年、宅地見込地を1平方メートル当たり3万8500円で買い取った。一方、跡地へ医学部付属病院の移転を予定する琉球大学は今月、同4万4200円~9万5500円を提示し、市の単価より最大約2・5倍高くなっている。すでに市に土地を売却した元地権者からは不満の声も出そうだ。

 市は返還前の14年5月27日から6月1日までに地権者説明会を4回開いた。その際「西普天間住宅地区の返還後の買取り価格想定イメージ」と題する資料を配布し、宅地見込地は、県道沿い以外は返還後に評価額が下がるとする予想図を示した。資料には「買取り価格や評価額などを保証するものではない」と注釈があるが、市買い取り額と土地の評価が両方示され、返還から「8年目」「X年目」まで想定して価格が下がり、停滞し続けるとグラフ付きで表した。

 市は同年、一括交付金を利用して緑地公園と墓地用に跡地約9・3ヘクタールを買い取った。

 市基地政策部の多和田功次長は本紙の取材に「(区画整理)事業が正式に決定していないため資料に盛り込めなかった」と説明した上で「資料は返還前に当時の条件で作成した。市が購入するとすれば(こうなる)という話だ。通常何もしなければ額は下がる。区画整理という要素が入れば当然上がる」と述べた。

 しかし、市は買い取り前の13年から区画整理する方針を示しており、比嘉秀夫基地政策部長(当時)も13年の市議会9月定例会で「土地区画整理事業を基本に地権者にも説明している。土地区画整理事業を前提に計画の見直しを図る」と答弁していた。

 また内閣府は跡地法で区画整理事業に触れていることから区画整理事業は「一定程度前提にある」との考え方を示した。

 宜野湾市に事務所を置く不動産鑑定士の新垣隆司氏は「あれだけの軍用地が返還されて区画整理が入らないとは考えにくい。(区画整理が決まっていないというのは)行政の詭弁(きべん)だ」と述べた。14年当時について「県全体として土地取引価格が上昇傾向で、『下がる』と説明する要因が見当たらない」と述べ「早く売るように誘導したかったのではないか」と指摘した。(明真南斗)