沖縄経済界「2年は厳しい」 沖縄税制の延長幅短縮


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 沖縄関連税制9項目が、沖縄側の要望通り5年程度延長されるかが焦点となっていた今年の税制改正で、大半の税制が2年限定の延長にとどまる見通しとなったことに沖縄の経済界からは「受け止め切れない」と困惑が広がった。5年間の延長を見据えた企業誘致や業界を挙げた改善策を検討する動きもあったが「2年だと企業誘致の武器として弱い」と税制存続の効果を疑問視する声も上がった。

自民党税制調査会の宮沢洋一会長(右から3人目)に要請書を手渡す翁長雄志沖縄県知事(同4人目)と沖縄出身の自民党国会議員=24日、自民党本部

 沖縄県酒造組合の大城勤副会長は「泡盛業界の厳しい現状が考慮された」と一定の評価をしたものの、「想定外の内容だ。政府・与党から『2年間で自立しなさい』と突き付けられた厳しいメッセージだ」と困惑を隠せない。県酒造組合は10月末、泡盛の県外出荷を倍増するなど5年間の中長期重点施策を発表していた。大城副会長は「酒税軽減措置の延長を踏まえた成長戦略になっている。5カ年計画を2年間で実現するのはかなり厳しい」と懸念を示した。

 同組合の土屋信賢専務は「5年延長を目指して取り組んできた。事実なら非常に残念だ。結果を受け止め切れない」とうな垂れた。「酒造所はただの一企業ではなく、地域・離島の雇用の受け皿となり、伝統文化も支えてきた。中小零細の酒造所が多い中、酒税軽減措置が切れると経営状況はさらに厳しくなる。その後も継続できるように政府・与党は配慮してもらいたい」と制度継続を求めていく考えを示した。

 宿泊施設が新たな追加対象として認められないことに対して、県ホテル協会の當山智士会長は「今回の要請は大観光時代を迎える沖縄観光の高度化に必要不可欠な税制だ。実現できないことは非常に残念だ」と述べた。その上で「県に引き続き、次年度も要請してもらいたい」と求めた。

 法人税の課税所得の40%控除などの優遇制度がある「国際物流拠点産業集積地域」も2年間の延長。県と共に企業誘致を展開してきた県工業連合会の桑江修専務理事は「予想以上に厳しい。実績や成果を出しているにもかかわらず2年では納得できない。沖縄は優遇税制を武器に企業誘致してきた。2年だと武器として弱い」と批判。「沖縄にとって物流は伸びゆく産業の一つで、税制優遇制度により効果を上げてきた。どのような線引きで今回の方針になったか不透明で、明らかにすべきだ」と述べた。

 一方、沖縄関係路線の航空機が積む燃料にかかる「航空機燃料税」を半額に軽減する措置は、要望通り3年延長の“満額回答”となった。

 日本トランスオーシャン航空(那覇市)の内間康貴取締役は「正式に聞いていないが、軽減措置が続けられるのはありがたい。軽減措置がなくなってもすぐに運賃を値上げする環境になく、経営の負担増が懸念された。JALグループでインバウンド客が国内路線を利用する時の割引制度を導入するなど、サービスを向上させる取り組みを進めたい」と語った。

 【租税特別措置】景気の下支えや地域活性化といった政策目的を実現するために設けている税制上の特例。企業の設備投資、研究開発費用の伸びに応じた減税や、地域の産業立地を後押しする優遇措置などがある。2年や3年といった適用期間があり、期限が来るたび延長の是非が話し合われるほか、新設の要望も毎年度寄せられる。業界団体や中央省庁の声を踏まえ、自民党税制調査会が中心となって決定している。