温暖化サイン 海からも 「啓風丸」観測50年 CO2増加続く


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海水中のCO2濃度を分析するために使う機器について説明する櫻井敬三主任技術専門官=11月30日、那覇市の安謝港

 12月は地球温暖化防止月間。気象庁は今年5月末、2015年の二酸化炭素(CO2)濃度の年平均値が国内全観測地点で400ppmを突破し過去最高を記録したと発表した。地球温暖化が深刻化している現状を示した。11月30日、約5カ月ぶりに安謝港に寄港した海洋気象観測船「啓風丸」が報道機関向けに公開された。船上で観測結果を分析している櫻井敬三主任技術専門官(52)は、大気のみならず表面海水中のCO2も増加し続けていることなどから「確実に温暖化に向かっている」と警鐘を鳴らした。

 「啓風丸」は東経137度線を赤道に向かっておよそ4千キロ、約50年間観測している。長期にわたって広範囲の観測を続けているのは世界で日本以外にない。

約5カ月ぶりに那覇に寄港した海洋気象観測船「啓風丸」=11月30日、那覇市の安謝港

 同船では海水を取水し、海水中に溶けたCO2濃度や塩分などを24時間体制で測定している。海洋内部の流れを解析する手掛かりになるほか、人間の活動で放出されたCO2がどれくらい海水に吸収されているのかを推定できる。放出されたCO2の90%は海水に吸収されるため、CO2濃度から地球温暖化の進行が分かる。

 長年の海洋観測の結果から、日本近海では太平洋などの大洋より温暖化の影響が強く表れており、海水温の上昇や酸性化が進んでいることが分かっている。

 沖縄気象台によると近年日本でも、温暖化によるとみられる局地的な集中豪雨や土砂災害など、災害が甚大になっている傾向があるという。

 櫻井主任技術専門官は「災害の規模は今後ますます大きくなる可能生がある」と指摘し、温暖化対策の強化が急務であることを強調した。