紅型復興 歩んだ軌跡 金城昌太郎さん、17年ぶり個展


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄の自然をモチーフにした作品の前に座る金城昌太郎さん=11月30日、那覇市の青砂工芸館

 県指定無形文化財保持者で紅型作家の金城昌太郎さん(77)の17年ぶりとなる個展が1日から、那覇市久茂地の青砂工芸館で始まった。戦後まもなく「郷土の工芸復興」を胸に紅型の世界へ入り62年。背中を追う後進たちの熱意にも押され、集大成の作品を展示する。

 金城さんは那覇市首里出身。沖縄戦当時は5歳で、避難先のやんばるの森を逃げまどった。首里中3年の時、担任の宮里朝光さんの言葉が人生を決めた。「沖縄には世界に誇れる工芸があるが戦争で焼き尽くされた。生き残った者で復興させなければならない。一生の仕事として尽くす気のある者はいないか」。胸を打たれ、紅型の道を志した。

 画家の名渡山愛順に学んだ後、紅型復興の第一人者・城間栄喜に師事し、26歳で独立。多くの恩師から学んだ感性や技法を基礎に独自の世界を確立した。暇さえあればスケッチへ出掛け、綿密な図案を基に沖縄の自然や風物を表現。琉歌にも造詣が深く、独創的かつ気品を感じさせる作風が魅力だ。1988年から98年まで県立芸大非常勤講師を務め、97年には県指定無形文化財「びん型」保持者に認定された。

 作業工程を全て1人でこなし「相手が気に入るものをと気にしたらいい物は作れない」と注文は受けていない。物づくりへの徹底した姿勢に加え、柔和な人柄を多くの後輩たちが慕う。個展開催へ重い腰を上げたのも、若手紅型作家たちに切望されたからだ。独立当時の作品から最新作までが並び、「沖縄にしかない自然の美しい色を表現したい」と紅型一筋に歩んできた軌跡を見ることができる。

 着物と帯を中心に約40点を展示し、一部販売も行う。11日まで。午前10時~午後7時半。青砂工芸館(電話)098(868)9338。(大城周子)