家賃滞納相談に成果 沖縄県営住宅の専門窓口 困窮者と福祉つなぐ


社会
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 沖縄県営住宅の家賃滞納対策として、県が独自に設置した社会福祉士による「専門相談窓口」の成果が出始めている。2015年9月の開所から16年10月時点までの相談総数は921件に上り、家賃の減免申請者も相談窓口設置前の約4倍に増えた。家賃を滞納せざるを得ない住民から事情を聞き、福祉サービスや就労支援制度などとつなぐことで、県は「路頭に迷う人をなくしたい」と意気込む。

 「ちゃんと食事は取れていますか」。家賃が払えないと電話してきた住民に、相談員の女性はそう問い掛ける。相談窓口には減免申請の問い合わせが多いが、その理由はさまざまだ。脳出血で倒れ障がいが残ったが、障がい者申請をしておらず手当を受け取っていないケースや、認知症の親を抱えての老老介護、多重債務に苦しんでいる住民もいる。

 相談員は住民の生活状況や希望を丁寧に聞き取り、家賃の減免や分納のほか、生活保護や高額医療費制度、法テラスの案内など幅広く問題解決の糸口を提案する。県土木建築部住宅課は「社会支援についてよく知らない方も多い。情報提供の窓口となり、必要とする場所にワンステップでつなげることが目標だ」と話す。

 県はこれまでも生活困窮者に向け家賃の免除や減免措置を用意していたが、長期滞納者の中には明け渡し訴訟に至るまでどこにも相談できず、減免なども知らないケースが少なくなかった。千葉県銚子市では14年、県営住宅に住む母親が家賃滞納で強制退去の期限を迎えた日、中学2年生の長女の首を絞めて殺害した事件も発生しており、生活困窮者の実態把握と具体的な支援策の案内は沖縄でも急務となっていた。

 県によると専門相談窓口は現在電話対応が主だが、今後は家庭訪問も考えているという。県住宅課の比屋根勉副参事は「これまで不幸が不幸を呼ぶような仕組みだった。事情を相談してくれれば解決策はあるかもしれない。情報を知らずに路頭に迷う人をなくしたい」と今後の展望を語った。

 県営住宅入居者専用の家賃滞納相談窓口は県住宅供給公社で月~金曜の午前8時30分から正午、午後1時から4時まで。問い合わせは(電話)098(917)1210。(赤嶺可有)