点字は世界広げる 「技能師」合格の宮城さん


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点訳された合格通知を横に、愛用の点字器で点字を打つ宮城かし子さん=那覇市松尾

 那覇市松尾の沖縄点字図書館に勤める宮城かし子さん(34)=那覇市=が昨年末、点字本の作成や点字の普及教育に携わる「点字技能師」に合格した。同協議会によると、資格取得時に沖縄県内に現住所がある合格者は宮城さんが初めて。沖縄点字図書館によると、県内に同資格保持者がもう1人おり、宮城さんは2人目とみられる。宮城さんは「点字は視覚障がい者の大切な文字。文字を持つことで私たちが生活の幅を広げられることを知ってほしい」と、点字の大切さを訴えている。

 点字技能師は、点字に関する専門知識・技術を持つ点字のスペシャリスト。厚生労働省認定資格で、日本盲人社会福祉施設協議会がその知識や専門性などの向上を目的に検定試験を実施している。点字図書館で働き始める約2年前まで宮城さんは点字を読み、打つことはできたが、専門的な点訳の知識はなかったという。「もっと学びを深めたいと思い、点字技能師を目指した」と話す。

 点字図書館では、利用者から要望のある本をボランティアと共に点訳する仕事などを担っている。初挑戦で見事合格した今「視覚障がい者の情報保障が今後どんどん進んでほしい。そのために点字技能師の認知度も高まってほしい」と願っている。

 点字で生活の幅が広がる例として、マンションのエレベーターに点字があることを挙げ「乗り合わせた人に私から『何階ですか』と声を掛けられる。小さなことだが、点字のおかげで相互のコミュニケーションが取れることがとてもうれしい」と語った。今後多くの分野で点字が広がることを期待する。

 試験では視覚障がいや障がい全般に関する一般的知識の学科と、墨字(インクで印字された文字)文章の点訳や校正作業が問われる実技がある。障がいの有無にかかわらず受験可能で、視覚障がい者には墨字問題は音声で読み上げられる。

 墨字の場合、文字を大きくしたり、下線を引くなどして意味を強調できるが、点字は文字の大きさを変えられない。その代わり、点字の位置を変えて強調の意味も点訳する。

 点字技能師の試験は毎年1回開かれており、今回が17回目の試験実施。これまでの合格者は全国で349人。そのうち16回までの試験で視覚障がい者の合格者は132人だった。

 宮城さんは全盲の視覚障がい者として県内で初めて普通高校に進学し、その後沖縄国際大を卒業した。(半嶺わかな)