米 抗議で中止のパイプライン トランプ氏推進署名 前政権から方針転換


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 【ワシントン=問山栄恵本紙特派員】トランプ米大統領は24日、2件の原油パイプライン建設計画を推進する大統領令に署名した。大統領が推進を指示したのは、中西部のノースダコタ州からイリノイ州に石油を運ぶ「ダコタ・アクセス・パイプライン」とカナダの原油を米テキサス州の製油施設に運ぶ「キーストーンXLパイプライン」。トランプ氏は事業によって「多くの雇用が生まれる」と強調した。オバマ前政権が環境破壊や地球温暖化につながるとして建設を却下したが、トランプ氏は前政権の方針を覆した。(1面に関連)

 ダコタ・パイプラインはノースダコタ州の建設予定地の近くに居留地を持つネイティブ・アメリカン(先住民)のスタンディングロック・スー族が石油流出で水源が汚染されるなどとして建設に反対し、全米から集まった賛同者や各地の先住民らと共にキャンプを張り、抗議活動を続けてきた。

 これを受け、米陸軍省は昨年12月、同省が管理する区域での工事を許可しないと発表し、開発会社にルート変更を求めていた。

 先住民らの、自然環境への悪影響を及ぼすとの主張に配慮した決定は、同様に自然環境への悪影響が指摘されている辺野古新基地建設などが進められる沖縄にも当てはまるのではないかとの指摘も出ていた。

 スー族は24日、声明を出し、大統領令の阻止に向けた措置を取ると表明。同日夕、ホワイトハウス前で抗議活動をした。

 トランプ氏は選挙戦で国内エネルギー生産拡大を公約に掲げ、二つのパイプライン建設を進める意向を示していた。建設予定地には現在も、スー族や全米各地から集まった賛同者らが工事再開を警戒し、滞在している。同パイプラインには日本のメガバンクも支援している。

 トランプ氏は商務長官に対し、米国で整備されるパイプラインへの国内産の鉄鋼製品使用を促進するよう命じた。