密輸薬物の中継基地化に懸念 沖縄の16年摘発175人で最多 覚醒剤押収量も最大


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 2016年の沖縄県内での薬物事犯による摘発人員が175人と04年以降、最多だったことが5日までに分かった。県警暴力団対策課がまとめた。これまでの最多だった15年比で8人増となる。昨年5月には一度にしては国内最大の覚醒剤約600キロの密輸事件なども発生し、覚醒剤の総押収量も約632キロと過去最大だった。

 県警幹部は「海外からの薬物供給は明らかに増えている。沖縄を中継基地に海外マフィアと暴力団が結託し、資金源を得ようとしている可能性がある」と警戒を強めており、県内を取り巻く深刻な薬物汚染の実態が浮かび上がる。

 大麻取締法違反での摘発人員は79人。過去最多だった15年から22人増加した。覚せい剤取締法違反での摘発人員は同比5人減、麻薬取締法違反などでの摘発も同10人減で、大麻での摘発人員増加が薬物事犯の総摘発人員を押し上げた形だ。

 年代別では10、20代の若年層が多くを占めた。覚醒剤は30、40代の中年層が多数を占めた。

 県警捜査幹部は「薬事法改正などで危険ドラッグ使用者が大麻に回帰している可能性がある」と危機感を募らせている。

 16年は国境県である沖縄を利用した薬物密輸が相次いだ。沖縄地区税関によると覚醒剤、大麻、不正薬物などをまとめた摘発件数は33件あった。覚醒剤に関してはヨットを利用した約600キロの密輸事件、クルーズ船を利用した約17キロの事件などが発生し、沖縄地区税関で過去最大の摘発量を記録した。

 16年に発生した大量の覚醒剤密輸事件に共通するのは台湾経由という点だ。台湾人船長による600キロの覚醒剤密輸事件は第11管区海上保安本部、税関、県警などの突き上げ捜査で中国から送られたということが判明。クルーズ船密輸事件に関しては仕出し地は台湾だったことが分かっている。

 県警幹部は国交がない台湾での捜査について「警察庁を通じて台湾捜査当局と情報交換などを進めている」としている。(当間詩朗)