沖縄戦後復興の象徴、解体へ セメント瓦使用の「太郎家」


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
沖縄で初めてセメント瓦を使った民家「太郎家(タローヤー)」=19日、沖縄県名護市(撮影・幸地光男通信員)

 約82年前に沖縄県内初のセメント瓦が葺(ふ)かれた名護市東江の民家・通称「太郎家(タローヤー)」が解体されることが決まり、21日までに作業が始まった。戦後に沖縄の民家で幅広く使われたセメント瓦は名護が発祥で、中でもタローヤーの瓦が第1号という。

 沖縄戦の戦禍もくぐり抜けた数少ない住宅であり、復興に貢献したセメント瓦の最初の姿としても貴重だ。識者からは「本来なら文化財に指定すべきで、国宝級の価値もあるぐらいすごい物だ」と強く惜しむ声が上がる。

 タローヤーは、名護出身でペルーやアルゼンチンに移民した宮城太郎さん(1883~1943年)が帰国した1930年ごろ、赤瓦の家を建てた。その家を35年にシロアリ被害などの対策で初めてセメント瓦に葺き替えたという。

 太郎さんの孫・宮城守也さん(57)は家族らと一緒に約45年間、今月12日まで住んでいた。しかし、家の老朽化に伴って土地所有者との話し合いで解体が決まった。

 解体の知らせを聞いた名護博物館は、解体前に鬼瓦など特徴的な部位を回収した。瓦は同館で保管しており、保存や活用法を検討中だ。