線虫がん診断、沖縄で臨床研究 東京のベンチャー 早期発見の手法確立へ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
がん予防を学ぶ沖縄市での講演会(資料写真、2016年2月)

 線虫の行動特性を利用してがんを早期発見する手法の確立を目指すベンチャー企業の「HIROTSUバイオサイエンス」(東京、広津崇亮社長)は3日、沖縄県うるま市の沖縄バイオ産業振興センター内に研究室を設置し、県内で臨床研究を始めると発表した。

 広津社長は九州大学での研究で、体長1ミリの線虫に人間の尿の臭いを嗅がせ、その反応から高い精度でがんの有無を判定できることを見つけ出した。線虫は健康な人の尿の臭いを嫌うが、がん患者の尿には引き寄せられる誘引行動を示すことから、低コストのがん診断法「N-NOSE(エヌ・ノーズ)」を2019年中に実用化する目標で研究を進めている。

 鹿児島市の鹿児島共済会南風病院と共同で行っている「エヌ・ノーズ」の臨床研究では、消化器がんと診断された患者の尿サンプルに対して9割を超える反応を示したという。

 沖縄では、研究機関と医療機関との間を仲介して治験や臨床研究を支援するウェルビー(浦添市、宇敷敏社長)と業務協力契約を3月に結び、県内の2医療施設から尿サンプル提供を受ける。今後、解析センターも県内に設置する予定で、ウェルビーとの提携を機に臨床試験を加速させる。

 HIROTSUバイオサイエンス沖縄事業部の佐々木学本部長は「臨床試験によって、実用化までにがんの種類も特定できるようにしていく。沖縄はバイオ産業の集積を目指す県の支援環境もある。がん組織が小さい早期がんの発見にも効果があると見られ、実用化すれば低価で安全ながん診断につながる」と述べた。