〈医療費窓口無料〉所得区分に懸念も 専門家、期待と注文


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 沖縄県が低所得者世帯の子どもたちが医療機関を受診する場合に窓口で支払いをしないですむ「現物給付」を含む「こども医療費助成事業」の見直しを検討することについて、県内の専門家は26日、取り組みを一定評価しつつも、医療の受け入れ態勢など課題も挙げた。

 県小児保健協会会長の宮城雅也県立南部医療センター・こども医療センター母子センター長は「現物給付は大切な支援の一つ。窓口負担がネックになって受診をためらう家庭もあり、早く来ることができれば、重症にならなくて済んだという事例もある」と取り組みを評価。「救急医療の受診が増え、本来の重篤患者の対応が遅れないか、医師が疲弊しないかとの懸念も生じる」と課題を指摘した。

 沖縄市ファミリーサポート事業などを受託する「NPO法人こども家庭リソースセンター沖縄」の與座初美理事長は「いい取り組みだが、想像する以上に大変な家庭は多く、県にはもっと早く実施してほしかった」と語る。「病院に行くお金がないため熱発した生後数カ月の赤ちゃんを受診させられないと言う母親がいた。受診費用を立て替え、病院に行ってもらった。子どもの命を守るという観点から、支援を急いでほしい」と訴えた。

 県マザーズスクエアゆいはぁとの小那覇涼子統括責任者は「現物給付への取り組みはありがたい」と一定評価しつつも「本来ならば所得の区分をつけないことが望ましい。ボーダーラインにいる子どもが少しの差で助成されないとなると、おかしい」と所得区分に疑問を呈した。「自治体の負担への懸念があると思うが、現物給付に変わることで安易な受診者が増えるということはないのではないか」と分析した。