不法投棄ごみ、遺骨埋める 糸満摩文仁


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
プラスチック容器やガラス瓶、弁当箱など、何十年にもわたり不法投棄されてきたとみられるごみ山の様子=1日午後、糸満市摩文仁

 糸満市摩文仁の国立沖縄戦没者墓苑の海岸に面した崖下斜面一帯に、弁当箱や空き缶などの家庭排出ごみや家電などが長年にわたり不法投棄されている。糸満市を中心に約30年、遺骨収集活動に取り組む沖縄鍾乳洞協会の松永光雄理事(63)=八重瀬町=は「この一帯ではこれまでに、複数の戦没者の遺骨が見つかっている。ごみ山の下にいまだに報われない魂が埋もれているかもしれない」と指摘し、行政主導によるごみ撤去対策の必要性を訴えている。

 不法投棄の現場は、国立沖縄戦没者墓苑裏手の崖下東西約500メートルほど。整備の行き届いた墓苑の目と鼻の先だが、日の当たらない急斜面下には1960年代後半ごろのものとみられる炭酸飲料の空き瓶や、弁当箱などのプラスチック容器、廃タイヤなど無数のごみが層を成し、一帯を埋め尽くしている。

 1974年から同地で遺骨収集作業に当たる金光教沖縄遺骨収集団の林雅信さんらが不法投棄の現場を発見し、その後、松永理事や金代有弘さん(73)=東京都=ら遺骨収集作業に当たる人たちが何年もかけてボランティアで清掃活動に取り組んできた。だが「ごみの量はあまりに甚大で、民間での撤去には限界がある」と金代さんは嘆く。

 沖縄平和祈念公園の指定管理者である県平和祈念財団の上原兼治事務局長は不法投棄について「数年前から把握しているが、管轄外のため何もできない」と述べ、行政の協力を求めた。

 不法投棄現場を「保安林地域」として所有する糸満市農政課の担当者も、2004年ごろから事態を把握しているが「撤去費用が膨大な上、現場は岩が入り組み危険な地形のため、県の協力が必要だ」と訴えている。県の環境整備課は「不法投棄の行為者に撤去責任があるが、当該地域については行為者が特定できないため作業が滞っている状態」と説明。その上で「関連部署・機関と連携して協議している段階だ」と述べた。

 激戦で追い詰められた住民が多くの命を落とした摩文仁を「沖縄の聖地」と呼ぶ金代さんは「聖地がこんなに汚され、その下に遺骨が眠っていると思うと胸が苦しい。責任のたらい回しに終止符を打たなければ」と語気を強めた。松永理事も「行政と民間が連携して取り組み、一日も早くごみ山の撤去が実現する日が訪れることを祈っている」と述べた。(当銘千絵)