[ココロ・カラダ不思議つながり]特別編 ドキドキしながら成長してね


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 さぁ、新年度が始まりました。学校はどうですか? ドキドキかな? りゅうPON!も4月から新たな気持ちで、これまでとは違う新聞作りに挑戦します。

 楽しくて、役に立つお話を紹介できるよう頑張りますので、よろしくね。

 その一つが「ココロカラダ不思議つながり」です。思春期保健相談士の徳永桂子さんが、みなさんの相談、質問にのってくれます!

 

徳永さん

徳永さん

 

こんにちは。思春期保健相談士の徳永桂子です。

これから、子どもたちからもらった身体や心・性や恋愛の質問にお返事を書いていこうと思います。

 

コカリさん

コカリさん

 

子どもたち?

 

 

徳永さん

徳永さん

 

そう、ここで言う子どもは18歳までの人。

読者の皆さんも身体や心、性や恋愛についてどんどん質問を送ってください。

コミックスや雑誌に書いてあったけれど本当だろうかとか、不思議に思っていることなど何でもOK。

学年だけで、名前や学校名は出ないから安心してね。

 

コカリさん

コカリさん

 

もう質問は来ているの?

 

 

徳永さん

徳永さん

 

編集部には来てないけれど、
今まで私が子どもたちからたくさん質問をもらっているので、最初はそこから紹介していくね。

コカリさん、読んでくれるかな?

 

 

コカリさん

コカリさん

 

好きな人を見るとどうして心臓がドキドキするんですか?

好きな人に近づくと身体が熱くなるようにも感じます

(中学2年生)

 

 

徳永さん

徳永さん

 

改めて考えてみると不思議だよね。

今は、地球上に約74億人いて、みなさんの周りにもたくさん人がいるよね。

人類が生まれたと言われるのは500万年くらい前。

そのうち499万何千年という長い間は、今と違って、好きな人に出会うってとっても珍しいことだったと思います。

 

コカリさん

コカリさん

 

ひょぇ~、人類の歴史が関係しているの?

 

 

徳永さん

徳永さん

 

そうよ。

だから、好きな人に出会ったら見失わないように、すぐに走っていこうとして、
心臓がドキドキして、身体の隅々にまで酸素や栄養を運ぶんです。

血のめぐりが良くなるので、身体が熱くなるってわけ。

 

コカリさん

コカリさん

 

だから顔が赤くなる人もいるんだね。

 

 

徳永さん

徳永さん

 

そうよ。

実はこれ、危険が迫ったときと同じ身体の反応なの。

危険な時って、すぐに逃げるか闘うかして自分を守る必要があるでしょう。

手に汗をかくのも、木をつかんで逃げる、石をつかんで投げるなどに役立つからなんです。

 

コカリさん

コカリさん

 

じゃあ、発表会でドキドキするのも?

 

 

徳永さん

徳永さん

 

そう、同じです。

他にも、試合や受験、面接を受けることがあるよね。

そういう時にドキドキすると、「あっどうしよう、あがってる、もうだめだ」と勘違いする人が多いんだけど、「これから○○に向かって頑張るぞ」って思うと身体が反応して、酸素と栄養を身体の隅々にまで送っているだけなんです。

だから焦る必要はありません。

「心だけではなく身体も一緒にガンバルぞーって準備しているんだ~、よっしゃ、きた~」って受け止めてね。

これから皆さんがいろんなことにドキドキして、また、ドキドキすることを楽しんで、心と身体で一緒にチャレンジしてくれたらいいな、と思います。

 

コカリさん

コカリさん

 

そうか~、身体と心の勉強って、普段に活かせるんだね。もっと知りたいな。

 

 

徳永さん

徳永さん

 

うれしいわ。 連載も読んでね。

 

 

~ おとなの方へ ~

 思春期は、性ホルモンの急激な増加で、性ホルモンと他のホルモンの一時的なバランスが崩れる時期です。自律神経失調などの身体症状が出たりするのはこのためです。また、脳の性をつかさどる部分は感情をつかさどる部分と近いこともあり精神的に不安定になることもあります。いつの時代も思春期の嵐を乗り越えるのは大変なことで、今の子どもが昔とすごく違っているわけではありません。

 しかし、昔と今では社会的背景が大きく違っています。パソコンやスマホの普及により、性に関わる情報が選別されることなく子どもに洪水のように押し寄せています。

 子どもを性的に利用しようとするおとなの狙いがどんどん低年齢化しています。ファッションや化粧品・ダイエット用商品など子どもを消費者として巻き込もうとする動きが子どもをお金へと向かわせて、おとなの巧妙な誘いへの敷居を低くしています。

 さらにHIV(エイズの原因となるウィルス)に代表されるような新しい病原体も増え、性感染症は若い世代で拡がり続けています。一方で、晩婚化により思春期の始まりから結婚まで平均15年以上あり、ライフスタイルの多様化も進んできました。

 こういった社会的背景を考慮にいれた性教育が思春期の子どもに必要とされていますが、性に対する社会的なタブー視もあり、思春期の子どもへの性教育は「子どもを産むためのもの」に留まっていることが多いのが現状です。

 自分の身体を病気から守ること(=健康)、性被害から守ること(=安全)、またそのベースになる子どもが自分を大切に思う気持ち(自尊感情とよびます)を育てるために自分の身体について正しく学ぶこと(=科学)の3つの視点が性教育には不可欠です。

 このような全人格的な性教育は、メディア情報を批判的に読み解く力も育てます。昔は良かったと従来どおりの方法を子どもたちに押し付けることは問題の解決にはなりません。

 性も含めて子どもにきちんと向き合えるかどうか、おとなが問われているように思います。最もタブー視されている性について話せる関係は、あらゆることを相談できる関係につながるのです。

 どうぞこの連載をお子さんと共有し会話のきっかけにしてください。

徳永桂子(とくなが・けいこ) 思春期保健相談士。

 心が生きると書く「性」、心が生きて交わる・お互いの心を生かして交わると書く「性交」の漢字の通り、子どもたちがありのままの自分を肯定できるように。豊かなパートナーシップを築けるように。みんなで明るく肯定的に性について語れたらいいなと思って活動中。

 新報小中学生新聞に「ココロ・カラダ不思議つながり」を連載中。著書に「からだノート~中学生の相談箱」(単著)「LGBTなんでも聞いてみよう~中・高生が知りたいホントのところ」(共著)など。