沖縄は全国一賃金が低く、所得格差は全国2位で、労働分配率は低く、長時間労働のわりには生産性も低い。沖縄にはオーナー系企業が多く、マネジメント力は弱く、成長意欲が低く、一族が潤えばいいという経営者も少なくない―。
このように沖縄が他の都道府県と比べて劣っていることをとかく強調する言葉を一度は見聞きしたことがあるかと思います。
こうしたことが背景にあって「企業は社員の育成やマネジメントの高度化をせず、会社は赤字で社員のことはおざなりにしている」「給与の低さに甘んじてほどほどでいいといった働き方をしている労働者もいる」と主張する人もいます。
これが現在流布している沖縄の「ストーリー」です。
このような沖縄のストーリーの描かれ方は識者らが本にしたり、インターネット上に投稿したりして拡散しています。
でもこの「ストーリー」は、果たして事実なのでしょうか? 仮にそのような事実があったとして、このようなことが全国に比較して沖縄で顕著であり、沖縄の所得や賃金の低さの原因なのでしょうか?
例えば「沖縄は平均所得が全国一低いが、1千万円以上の所得を得ている人は全国10位である。所得格差に関して沖縄は二極化した社会である」という言説があります。しかし実際には沖縄で年収1千万円以上の高額所得世帯数は全国最下位なのです。次回以降、こうした主張の誤りを事実に基づき説明していきます。
「二極化」論者は統計を意図的にか無意識にか、正確に引用していないのです。
本連載では各種統計に基づき、これらの「沖縄に関するストーリー」を検証します。事実から見えてくる等身大の沖縄の姿を明らかにすることで、沖縄の貧困問題や雇用、経済などの構造的な課題を明らかにしていきます。(安里長従・司法書士)
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沖縄経済は拡大が続くが、課題も山積している。司法書士の安里長従氏が沖縄の現状を各種指標から読み解き、沖縄の貧困や雇用について提言してもらう。
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安里長従(あさと・ながつぐ) 石垣島出身。沖縄憲法25条を守るネットワーク(沖縄25条の会)事務局長。沖縄クレサラ・貧困被害をなくす会事務局次長。