ひとり親出現率全国一の沖縄 どんな支援が必要か? 子どもの貧困対策センターあすのば・小河代表理事に聞く


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小河光治代表理事

 沖縄県が2016年に公表した沖縄のひとり親世帯の貧困率は58.9%。17年の高校生調査では、過去1年間に食料を買えなかった経験があるひとり親の親子世帯が45.6%に上った。見えにくい子どもの貧困を「見える化」しようと取り組む、「子どもの貧困対策センターあすのば」の小河光治代表理事に、ひとり親支援の在り方などを聞いた。(聞き手・新垣梨沙)

 ―沖縄はひとり親世帯の出現率が全国一高い。子どもの貧困対策を進める上で、ひとり親世帯の支援の必要性をどのように考えているか。

 「ひとり親世帯の子どもの2人に1人が貧困状態にある。集中的に支援を行うことは大切と考えている。特に、婚姻歴のないひとり親世帯は寡婦控除が適用されず、課税所得額が高く算出され、負担が重くなっている。当事者団体の活動で、みなし寡婦控除を導入する自治体は増えたが、本来は寡婦控除を受けられれば非課税世帯になる家庭が、課税世帯となる現状がある。給付型の奨学金も、非課税世帯でなければ恩恵を受けられず、支援が急務だ」

 ―子どもの貧困対策「見える化プロジェクト」の中で、15事例を「グッドプラクティス」として選定したが、沖縄県が参考にすべき事例はあるか。

 「児童扶養手当は、法改正で第2子以降の加算額が倍増されたが、一人っ子のひとり親家庭には何も光が当たっていない。東京都は、ひとり親家庭支援策として、1人1万3500円の『児童育成手当』を支給している。沖縄の子どもの貧困率29.9%を下げるには、手当などを増やしていくか、親が稼げるようにしていくかしかないと感じる。ひとり親の多い沖縄では、東京都のような仕組みを取り入れることも必要ではないか」

 「直接お金を支給することに抵抗があるなら、出て行くお金をセーブするという方法も効果がある。沖縄は賃貸住宅の家賃も安くない。1万3500円を家賃補助すれば、賃貸で暮らす人の助けになる」

 ―「入学応援給付金」事業に、沖縄からも多くの応募があったと聞いたが。

 「昨年から、春に入学や新生活を迎える低所得世帯の子どもを応援しようと、成績不問、返済不要の給付金を支給している。2回目の今年は2200人に支給したが、沖縄からは149人の応募があり、全国で5番目に多かった。特徴としてはひとり親家庭だけでなく、二親世帯の応募も多かった。両親共に非正規という家庭もあり、ここもまた放置しておくわけにはいかないと思った」

 「支給世帯にはアンケート調査をして、給付金が役に立ったか検証している。一方で、その方々の困りごとやどんなことを望んでいるのか聞き取ることも、今後支援をする上ではとても重要だと考えている」

 ―子どもの貧困対策に取り組む沖縄県に望むことは。

 「物価も高い中で、衣食住、教育にかかる費用をいかに抑えてあげるか、自治体ができることは大きいのではないかと思う。県が力を入れている就学援助については、より多くの人が利用できたり、基準額を上げていったりすることが必要だと感じる。貧困対策はどうしても対象が限定されがちになるが、全ての子どもたちに光が当たり、だれも排除されない制度をいかに充実させていくかも忘れてはいけない視点だ。低所得世帯の高校生に行うモノレールの割引についても、全ての子どもが割引を受けられるようにすることができればいい」

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 おがわ・こうじ 「子どもの貧困対策センター公益財団法人あすのば」代表理事。昨年の児童扶養手当法改正の国会審議では、参考人として意見陳述した。