「福」に幸せ、平和込め 仲原さん所有拓本の由来判明 中国の郭修文作品


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 【八重瀬】八重瀬町外間の仲原親久さん(69)が所有する「福」の字の拓本が中国の有名な縁起物だということがこのほど、分かった。3年半前から知人の中国人らに調査を依頼し、15人目の依頼となった沖縄大学人文学部教授の王志英(しえい)さん(52)が「中国人に愛されてきた中国・清の時代の郭修文の文字」と解読した。王さんは「裕福や幸せだけでなく、世の中が平和だという意味も込められた中国人の最高のプレゼント」と話す。仲原さんは「家族からガラクタだから処分したらと言われていたが、捨てないで良かった」とすっきりした様子で語った。

 拓本は12年ほど前に亡くなった叔父で那覇市参与や那覇・福州友好都市福州部会長などを務めた宮城みのるさんの遺品。縦約140センチ、横約90センチ。赤地に白字で中央に「福」と書かれ、上下に漢字がつづられている。3年半前にもらったが詳細は分からなかった。

 仲原さんは拓本の意味が知りたくて、中国とゆかりのある人や中国人らに調査を依頼したが、判明しなかった。諦めようと思った矢先、知人を介して王さんに出会った。

 王さんは今年の春休みにインターネットなどで調べ、日本語に翻訳した。中国の言い伝えによると郭修文は、酔っ払った時に3本の筆を手に持ち、「福」を一気に書き上げた。福の字には禄、寿、喜の文字が隠れており、縁起が良いとして中国人に人気がある。上下の文字は福の評価などが書かれている。

 「福」を複製した石碑が桂林、北京、西安にあり、仲原さんの拓本は西安の碑林博物館のものとみられる。「中国では本当にいい物。拓本は黒が普通だが、赤はとても縁起がいい」と王さん。「仲原さんの情熱に感動し、解明したいと思った。私の気持ちもすっきりした」と語った。

 仲原さんは「中国に行ったことがないので、いつか西安に石碑を見に行こうと母ちゃんと話している」と笑顔を見せた。(豊浜由紀子)

仲原親久さんが叔父から引き継いだ畳一畳ほどの大きさの「福」の拓本。3年半かけて調査し、中国で有名な縁起物だと分かった=八重瀬町外間
王志英さん