医師に暴言・暴力も 酩酊患者が救急を圧迫 沖縄県立南部医療センター


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 沖縄県立南部医療センター・子ども医療センター(南風原町)の救命救急センターに、緊急を要しないアルコール関連疾患者の夜間・深夜の受診が相次ぎ、業務を圧迫していることが分かった。2016年度の1年間に酩酊(めいてい)状態の受診者が159人、延べ392回受診していた。同センターでは、医師が患者に暴言を吐かれたり、暴力を受けたりする事例が複数回生じたことから、緊急対応時の警備員を1人増員した。梅村武寛救命救急センター長は「ここでなくては救えない緊急の患者が昼夜搬送されてくる。その治療に力を尽くしたい」と話している。

 同救命救急センターによると、16年度の総受診件数は3万6217件。この中から(1)アルコール中毒(酩酊)による意識障害(2)アルコール離脱症状による不穏(3)アルコール性肝硬変等による全身状態悪化などの内因性疾患と飲酒による外傷症例を集計した。392件(159人)の受診のうち、入院に至ったのは212件だった。いずれも救急車や直接来院して体調不良を訴えている。

 肝不全など重症症例以外に、酩酊状態で1泊する事例も入院とカウントされている。受診人数159人のうち、6割(97人)は「1回」の受診だったが、4割(62人)は2回以上の複数回で、中には1年で44回来院し、救命救急センターを「かかりつけ」とする患者もいた。

 データは酩酊で転倒し外傷を負ったケースや路上寝による交通外傷などを含むが、アルコール関連疾患と病名が付かない打撲など外傷名だけの場合は統計に反映されておらず、実数はさらに多いとみられる。受診の時間は夜間・深夜が多く、正月や清明の時期は昼間の救急搬送も増えるという。

 同センターは15年度から警備員を増員し、泥酔患者が暴れる時は、センター内を2人体制にして対応に当たる。治療や説明中も警備員が同席することで、暴れる患者の数が減ったという。梅村センター長は「当院内での対策とはなっても、根本的な解決にはなっておらず、うちに来づらくなった分、他の医療機関に移っているのではないかと思う。無理な飲酒をやめることで救急・時間外を受診せずに済む事例も多いように感じる」と話した。(新垣梨沙)