新証言 収集へ あす、宮森小ジェット機墜落事故58年


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石川・宮森630会が生存者や遺族の声をまとめた証言集「沖縄の空の下で」

 【うるま】米軍嘉手納基地を飛び立った整備不良のジェット機が、うるま市石川の宮森小学校に墜落して30日で58年になる。事故を語り次ぐ「石川・宮森630会」(久高政治会長)は、墜落から60年となる2年後に向け、証言集の発刊など新たな取り組みを始めている。

 同会の精神的支柱になっているのは、継承活動に尽力し、2年前に他界した前会長の豊濱光輝さん(享年79)だ。豊濱さんは当時巡回教師で、事故直後、子どもたちの遺体が運び込まれた安置所で遺族の対応をした。

 わが子を失った親の慟哭(どうこく)を目の当たりにした豊濱さんは、事実を継承していくことを決意。鮮明に残る記憶を思い出すのがつらく、口を閉ざしてきた遺族や関係者を一人一人訪ね、話を聞き、証言集3巻、資料集1冊にまとめた。晩年には証言集第4巻の作成に取り組み、完成までもう少しだったという。

 石川・宮森630会は豊濱さんの遺志を継ぎ、証言集第4巻に取り掛かった。米国立公文書館にある関係資料を収集するなどしている。夏には編集委員会を立ち上げ、翻訳作業などに本格的に取り組む。

 「関係者は高齢化している。今できることをしないといけない」。630会会長の久高さんは、証言の収集を急ぎたい考えだ。

 久高さんは「豊濱さんが遺した証言や資料を引き継ぎ、まだ話を聞けていない人にも聞きたい」と第4巻の作成について話す。事故当時の宮森小学校在校生は約1300人、保護者や地域住民も含めると3千人を超えるとされている。「一言二言の証言でもいい。多角的な視点から、どういう事故だったのか知りたい」という。

 事故から58年となる今も明らかになっていない部分もある。久高さんは「犠牲者や負傷者への賠償金の交渉経緯や賠償額については分からないことが多い」と説明する。今後米国から取り寄せた資料を読み込み、解明を進めていく考えだ。

 「真実を知りたい」。久高さんは墜落60年を前に、宮森小の悲劇を次世代へ語り継ぎ、残していくことへの決意を胸に刻んでいる。(上江洲真梨子)