糸満で「ヒロシマ原爆展」 被爆者の瀬越さん 投下後の惨状語る


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 広島の原爆投下がテーマの企画展「ヒロシマ原爆展」(広島市主催)が1日、糸満市の県平和祈念資料館で始まった。広島市内で当時被爆した体験者が来県し、原爆投下直後の様子を証言した。水を求めて絶命していく人たちを目の当たりにした瀬越睦彦さん(83)=広島市=は「核兵器のない世の中が来ることを願っている」と、切望した。企画展は8月12日まで。入場無料。

被爆体験を語る瀬越睦彦さん=1日、県平和祈念資料館

 瀬越さんは国民学校5年生の時に、爆心地から2キロ離れた広島市内の自宅で被爆した。

 米軍が広島市に原子爆弾を投下した1945年8月6日の朝、瀬越さんの自宅は全壊状態になった。原爆が落ちた瞬間、母親はとっさに隣の部屋で寝ていた生後間もない弟をかばいに走ったと言い「母親の子を思う気持ちは強いと感じた」と振り返った。

 原爆が落ちた後、広島市郊外の知人の家まで避難する道中、爆心地付近から逃げてきた人たちを目にした。皆、口々に「水」「水」とうめき、側溝に流れる水を飲んで安心した瞬間に絶命した人もいたという。大やけどを負った人がほとんどで「男か女かすらも分からない状態だった」と証言した。

 戦後、長く被爆体験は語らなかったが、自分より年上の女性が必死に体験を語る姿を見て「自分も墓場まで持って行ってはいけない」と思い直した。今は証言者として修学旅行生らに被爆体験を語る。「いつの日か、核兵器のない世の中が来ることを祈っている」と訴えた。

 瀬越さんの被爆体験証言講話は2日もある。午前10時半から県平和祈念資料館で、午後2時半からは那覇市若狭の対馬丸記念館で講話する。いずれも入場無料。