フェリーと共に30年 平野さん夫妻の船内売店終幕 伊江ー本部


この記事を書いた人 大森 茂夫

 「おはよう」「気を付けていってらっしゃい」と、沖縄県伊江港と本部港を結ぶ定期航路の乗船客に明るく声を掛け、手作りのおにぎりやサンドイッチなどを船内で販売する売店が30年にわたる営業に幕を下ろした。

30年間にわたるフェリー内の売店の営業を終え、船員らと記念撮影に応じる平野健一さん(後列中央)、信子さん(後列左から2人目)、陽子さん(後列左端)=6月30日、フェリー「いえしま」

 伊江村民の足として1日4往復(片道30分)する村営フェリー。伊江村東江上区の平野健一さん(69)は、契約満了に伴い、6月30日の運航を最後に、売店の営業を終了した。

 健一さんは1987年6月からフェリー「いえしま」「ぐすく」2隻の売店を営み、欠航を除き年中無休でフェリーに乗り込んだ。

 毎朝5時から妻の信子さん(66)と仕込みをし、手作りの品をフェリー内で販売してきた。伊江港発の午前8時の始発から本部港発午後5時の最終便まで、乗船客と接してきた。

 5年前から娘の陽子さん(36)と交代し、健一さんは裏方へと回った。ゆり祭りなど多くの乗船客がある時は2隻のフェリーが交互に運航し、健一さんも店に入って切り盛りした。

 健一さんは「5人の子どもを育てながら30年間はあっという間だった。たくさんの人たちに出会え、楽しく過ごせた」と笑顔を見せた。信子さんも「子どもを背負いながら毎日売店に立った。保育園が休みの時に『私が子どもを預かるから仕事に行きなさい』と言ってくれた保育士もいた。周囲の方々に支えられ感無量です」と感謝した。