1票の願い実現へ 那覇市議選 「市政に子育て目線」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
カチャーシーを舞い、初当選を喜ぶ翁長雄治さん(中央)=10日午前0時2分、那覇市の選挙事務所

 定数40に67人が立候補し、激戦となった9日投開票の那覇市議選。候補者が乱立する厳しい選挙戦をくぐり抜けてきた候補者は、当選の報に歓声を上げ、日に焼けた笑顔でカチャーシーを舞い、勝利をかみしめた。一方、票が及ばず涙をのんだ候補者は、新議会に思いを託した。同姓の候補者が複数おり、案分票の処理から開票作業は深夜に及んだ。「子どもを育てやすい那覇市にしたい」「誰もが暮らしやすい街にしていく」「貧困と格差をなくしたい」―。当選者は市政が抱える課題の解決に向け、市民の代表として4年間の重責を担う。

 翁長雄志知事の次男で、新人の翁長雄治(たけはる)さん(30)が初当選を果たした。当確の情報が入ったのは9日午後11時45分ごろ。那覇市大道の選挙事務所に集まった支持者や妻の昌子さん(35)と抱き合い、一人一人と握手して喜びを爆発させた。眼鏡を取ってあふれる涙を拭い「いつも市民の声を聞く政治家になりたい。地に足を付けてやっていきたい」と職責の重みをかみしめ、決意を新たにした。

 出馬について父は積極的に賛成しているわけではなかったというが「とにかく歩け。しっかりと有権者と会い、声を聞きなさい」と助言を受けた。

 父だけでなく祖父・助静(じょせい)氏は真和志村長(現在の那覇市内)、伯父・助裕(すけひろ)氏は西銘順治知事の下での副知事や県議を務めた政治家。その系譜を継ぐ翁長家に生まれ、幼いころから選挙や政治の喜びも厳しさも近くで感じてきた。

 大道小から真和志中、興南高を経て国際武道大(千葉県)を卒業後、民間企業に勤めた。2014年11月の知事選では辺野古新基地建設反対を掲げた父の選挙スタッフの1人として支えたが、その時は出馬するとは思っていなかった。

 出馬の決意を後押ししたのは3児の子育てをする中で実感した、子育て環境の改善だった。双子の長男と次男は2歳、三男は3月に生まれたばかり。選挙戦の街頭演説で「私の子も待機児童になった」と明かし、子育て世代と同じ目線で語り掛けた。

 「夜、子どもが熱を出した時に手元にお金がないと救急を受診できない」と自らの体験を基に語る。子ども医療費の補助制度に関し「今、那覇市は後でお金が返るシステムだが、窓口でお金を払わなくてもすむシステムをつくりたい」と現物給付の導入に尽力する考えだ。抱負を問われ「3人の子育てをする中、那覇も含めて全体的に支援がまだまだ不足していると感じる。子育て支援をしないといけない」と固く誓った。