「組踊音楽太鼓」の比嘉聰さんが人間国宝に 沖縄県内で12人目


この記事を書いた人 大森 茂夫
「組踊音楽太鼓」の人間国宝に認定されることが決まった比嘉聰氏

 国の文化審議会(馬渕明子会長)は21日、「組踊音楽太鼓」を重要無形文化財に指定し、その保持者(各個認定)=人間国宝=として光史流太鼓保存会副会長、県立芸術大学教授の比嘉聰氏(65)=那覇市=を認定するよう松野博一文科相に答申した。重要無形文化財「琉球舞踊」の保持者(総合認定)に27人を追加認定することも答申した。

 県内の人間国宝は12人目(このうち3人は物故により現在は解除)で芸能分野では7人目。比嘉氏は県内初の戦後生まれの人間国宝となる。

 人間国宝は例年、9~10月の官報告示をもって正式に認定される。「琉球舞踊」保持者も人間国宝と同時に正式認定される。現在、活動中の人間国宝の数は東京(50人)、京都(11人)に次いで沖縄(9人)が全国3番目となる。

 組踊はせりふ、音楽、舞踊で構成される沖縄の伝統的な劇。文化庁は「曲趣を的確に捉え、端正で抑制の利いた演奏は組踊を豊かに表現するものとして高く評価されている」とした。

 比嘉氏は「琉球舞踊」保持者(地謡の太鼓)としても追加認定される。

 夢にも思わず
 比嘉聰氏の話 認定は夢にも思わなかった。私より先輩の方がたくさんいるので恐縮しつつ喜んでいる。課題はいかに後輩を育てるかだ。一打一打の純度を上げていくことを伝えたい。太鼓が一つのジャンルとして認められたらいい。

 比嘉聰氏(ひが・さとし) 1952年、久志村(現名護市)生まれ。72年に、後に「組踊音楽太鼓」の人間国宝になった光史流太鼓保存会家元の故・島袋光史氏に入門。79年に野村流組踊地謡研究会主催「万歳敵討」で組踊音楽太鼓の初舞台を踏んだ。85年、光史流「比嘉聰練場」を開き、88年、光史流師範免許取得。2001年に県指定無形文化財「沖縄伝統舞踊」(太鼓)保持者、15年重要無形文化財「組踊」(総合認定、太鼓)保持者。国立劇場おきなわ組踊研修講師を務め、15年からは県立芸術大学教授。

人間国宝 組踊や琉球舞踊など2人以上のパート(立方、歌三線など)で構成される芸能が重要無形文化財に指定される場合、集団で認定(総合認定)され、後継者養成事業を行う。総合認定の保持者で特に高度な技芸を体得している者はさらに各個認定を受け、通称「人間国宝」と呼ばれる。