沖縄のアタマジラミ、琉大など新薬剤臨床試験 市販品に効果なく


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 耐性が強く、国内の市販薬剤では効かない沖縄のアタマジラミ症の新しい治療薬剤の臨床試験を、琉球大学とアース製薬が共同で進めている。研究を進める医師によると、中学生にも感染が広がるなど県内でまん延しているという。「新規薬剤は、海外ではすでに安価で市販されている。有効な薬剤が簡単に安心して早く使えるようにしたい」と語り、臨床試験への参加を呼び掛けている。

 アタマジラミはシラミの一種で、頭に寄生して激しいかゆみを引き起こす。頭同士の接触や寝具、タオルなどを介して移り、幼稚園や保育園、学童など低年齢で流行することが多い。命を脅かすものではないが、かゆみが続くことで集中力が低下する弊害がある。感染力が強く増殖も早いため、早期発見が重要だ。

 国内ではフェノトリン(商品名スミスリンなど)のパウダー剤やシャンプー剤が一般的な駆虫剤として使われているが、国立感染症研究所の2006年~11年までの調査によると、県内で採取されたアタマジラミは95・9%でフェノトリンへの抵抗性遺伝子が確認された。他地域での割合は5%程度。

 抵抗性があるシラミに対しては、今のところ専用のくしで丹念にすいて卵や虫を取り除くしか治療法はない。多発地域では、1校で100人以上の患児がいた学校もあった。

 中学生にまで罹患(りかん)が広がっている傾向に琉大は、有効な薬剤がないだけでなく、フケと勘違いするなどして発見が遅れることで、きょうだいや保護者ら家族間に感染が広がっているとみている。同大付属病院皮膚科の山口さやか医師は「治らないからと保護者が娘の髪を短く刈ってしまった事例もあった。シラミが原因でいじめにつながりかねない」と有効な治療薬がない現状を語る。

 6月から始めた臨床試験では、欧米で安価で市販されている薬剤と同成分の新規シラミ駆虫薬を用いている。薬剤は液状で、頭を洗う前に頭部全体に塗布し、シャンプーなどで洗い流す。琉大は30人ほどに使用してもらい、効果と安全性を確かめた上で国内承認を目指す考えだ。

 臨床試験への参加の問い合わせは、琉球大学付属病院皮膚科(電話)098(895)1153(月-金曜日午前9時~午後5時)。
 (新垣梨沙)