国旗国歌や愛国心教育を前面 来年度那覇地区の道徳教科書 市民団体「政治的中立損なう」


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教育出版の5年生用道徳教科書に掲載された安倍晋三首相の写真

 2018年度から小学校で使用される道徳教科書の教科書採択で、沖縄県の那覇市、浦添市、久米島町、北大東村、南大東村の5市町村で構成する那覇地区で、愛国主義的傾向の強い教育出版(東京)の教科書を採択していたことが、8日までに関係者らへの取材で分かった。教育出版の道徳教科書は、他社と比べ突出した文量の国旗・国歌に関する記述や、安倍晋三首相ら現役政治家の写真を掲載するなど、政治的中立性などの観点で市民団体から批判が挙がっている。

 道徳教科書の採択は、18年度から道徳が教科化されることを受けて、本年度初めて実施された。那覇地区では教員やPTA関係者などでつくる採択地区協議会が同社の道徳教科書採択を決定した。

 同社の道徳教科書を巡っては、教科書問題に取り組む市民団体「子どもと教科書全国ネット21」が7月、(1)国旗・国歌の扱いが他社に比べて大きい(2)安倍首相など現役政治家の写真を掲載し、政治活動助長の恐れ(3)経済界での成功者を多く紹介し、特定の企業の宣伝にあたる恐れ(4)礼儀作法を規制・強制し戦前の教科「修身」と類似-などを挙げて問題視し、同社の道徳教科書採択に反対する談話を発表している。

 県内では中頭、宮古地区が日本文教出版、島尻、八重山、国頭地区が光文書院を採択した。竹富町はまだ採択する教科書を決定していない。(黒田華、塚崎昇平)