「3400億円以上」に暗雲 県の18年度国庫要請行動 官邸対応実現せず


この記事を書いた人 大森 茂夫

 翁長雄志知事が10日、2018年度沖縄関係予算の概算要求に向けた2日間の要請行動を終えた。政府による昨年の減額措置を踏まえ、今回は初めて県市長会や県町村会が同行する異例の要請となり、総ぐるみで予算確保を求めた。今後は月末が期限の概算要求での内閣府の対応が焦点となる。ただ、沖縄政策の決定権を握る首相官邸には要請できておらず、県が要望する「3400億円以上」の実現には暗雲も漂う。

 本年度の沖縄関係予算は昨夏の概算要求で16年度当初予算比140億円減の3210億円となり、同年末にはさらに60億円削られて3150億円で決着した。予算の未執行や不用額を指摘された一括交付金の減額が全体額を押し下げた。

 予算については安倍晋三首相が21年度までの3千億円台の維持を確約しているものの、昨年一括交付金が大幅減額された経緯から、県内には3千億円に限りなく近い水準まで予算が減らされることへの危機感がある。一括交付金は41市町村に配分され多くの事業に生かされているため、各自治体にとっても増減は「死活問題」(ある首長)だ。

 県は今回の要請で県市長会や県町村会にも呼び掛け、政治スタンスの違いから普段は翁長知事と距離を置く保守系市長も協力した。「沖縄は一括交付金のおかげで経済、学力が向上している。有効に活用したい」(宜保晴毅豊見城市長)と配慮を求めるなど、予算確保に“呉越同舟”で臨む異例の展開となった。

 一方、知事らは今回の要請で、例年の訪問先に必ず含まれている首相官邸への要請は実現しなかった。翁長知事が就任後、15年8月の要請では官邸で首相が直接要望を聞き、昨年8月は菅義偉官房長官が対応した。だが今年は県が希望するも機会は得られず、過去の対応との落差が際立った。米軍基地問題で県との対立が続く政府によるけん制だとの見方があり、基地と振興との「リンク論」も頭をもたげる。ある政府関係者は概算要求の見通しについて「どんな理由であれ、官邸が対応しないことが何より象徴的だ。県にとっては厳しい月末になるだろう」と語った。