「ヤミ」一掃へ民泊新法 来春にも施行、課題も 条例で営業日数の調整可


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 住宅の空き部屋などを旅行客に貸し出す際の民泊ルールを定めた「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が6月に成立した。国のガイドライン制定などを経て来春にも施行される。沖縄でも修学旅行生を対象にした教育旅行型民泊や、那覇市を中心とした商業型民泊が普及する一方で、無許可の「ヤミ民泊」や利用者の迷惑行為が問題となっている。新法は年間営業日数の上限を180日と定めたが、都道府県や中核市は条例を定めれば営業日数を減らすことができる。ただ国のガイドラインができるまで自治体の条例制定作業も進まず、ヤミ民泊排除への実効性や既存宿泊施設との共存へ課題は多い。

■取りこぼし防ぐ

 民泊新法は、外国人訪日客の急増で供給が間に合わない都市部の宿泊需要に対応するという背景がある。ホテルなどの宿泊施設にも配慮しつつ、適正な民泊運営によって観光客の需要を取りこぼさないことが狙いだ。

 これまでも旅館業法で営業許可を受ければ民泊での受け入れは可能だったが、厳しい建築基準や複雑な手続きが障害となり、無許可の「ヤミ民泊」がまん延していた。

 新法では住宅施設を民泊として利用する事業者は都道府県、事業者に代わり民泊施設を管理する業者は国土交通省、民泊施設を紹介するサイトの運営者などは観光庁に登録するよう定めた。登録することで、営業日数を守っているかなど業者の管理がしやすくなる。

 自治体などの立ち入り検査で違法行為が見つかった場合、1年以内の業務停止や廃止が命じられる。命令に従わないと100万円以下の罰金や懲役刑が科されることもある。民泊の紹介サイトで違法物件が見つかれば、サイト運営自体ができなくなる。

 事業者は外国人観光旅行客に配慮した多言語での施設案内、避難経路など非常時の案内表示を講じなければならない。民泊施設と分かるよう標識を掲げ、宿泊者の氏名、住所を名簿で記録する義務もある。

■教育型で独自指針

 県が2016年に行った調査によると、修学旅行生を受け入れている1196の民泊施設のうち、34%に当たる406施設が旅館業の許可を取っていなかった。16~17年に行った調査では、商業型民泊施設でも所在地が特定できた573施設のうち54%に当たる309施設が無許可だった。

 県は今年5月に教育旅行民泊の指針を策定した。受け入れ団体にアレルギーや食中毒などの食事面や衛生上の配慮、避難経路の確保や施設の定期点検を定めるなど、他県との差別化を図っている。

 民泊新法の成立を受け、県は「ヤミ民泊の排除になれば」と期待するが、「営業日数に関する条例を制定するかも含め部署内での調整を急がないといけない」と話す。

 中核市の那覇市は施設への立ち入り検査が可能な保健所を設置しており、独自で民泊施設を検査、管理できる。現在、民泊の実態調査もしており「調査結果からうかがえる近隣住民の影響と、民泊新法の詳細を見極めながら、条例を那覇独自で設けるかも含めて検討する」とした。