ダイビング、海中で音声指導 光で音運ぶ技術活用 沖縄海洋工機開発


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マスクに取り付けたマイクが拾った音声を光で発信する送話器(右)と、光を受信して音声に変換する受話器=25日、県庁記者クラブ

 沖縄海洋工機開発(豊見城市、上間英樹社長)は25日、発光ダイオード(LED)照明に音声を乗せて送受信する可視光通信技術を水中に応用したレジャーダイビング向けの水中音声無線機器「M1」の商品化を発表した。ダイビングの指導・ガイドではボードに書いた文字やジェスチャーを使ったが、「M1」はインストラクターの声で説明が伝えられ、安全管理やスキル向上に役立てる。

 可視光通信は、LED光を1秒間に100万回の超高速で点滅させ、点滅パターンによって音声などのデータを送受信する。陸上では普及が進んでいるが、海中では送信者と受信者が共に揺れることなどから、ダイバー同士が1メートル以上離れると光を受信するのが難しくなるという技術的な課題があった。

 日産自動車総合研究所でのエンジン制御開発などを担ってきた上間社長は、光の拡散を前提とした送受信の方式や機器の小型化を確立し、10メートルの間隔でも海中で音声を届けられるようになった。県庁記者クラブで会見した上間社長は「沖縄の海は透明度が高いのでよりクリアに伝えられる。可視光通信の水中への応用は、特に沖縄では観光と結び付きやすい」と話した。

 インストラクターの声をフルフェースマスクに装着したマイクが拾い、浮力調整器(BCD)の胸元に取り付けた送話器からLED光の信号となってデータが発せられる。受話器に光が届くと、ダイバーのゴーグルなどに取り付けた骨伝導式スピーカーから音声が聞こえる仕組み。

 ダイビングショップのイシミネガイドワークス(恩納村)では、7月から体験ダイビングのガイドや認定証講習の指導に機器を使用している。伊志嶺剛一代表は「初めて潜る際はどうしても緊張するが、インストラクターの声掛けがあることで、リラックスして水中になじむ速度が早くなる。講習でも声を通して伝えることでスキルの上達速度が上がる」と語った。

 上間社長は水中可視光通信技術の応用市場として、アクリル水槽越しにダイバーの声がスピーカーから流れる水族館のショーにも活用を広げるほか、水難救助隊の訓練用の機器開発も進めている。

 販売価格は送信器1台と受信器4台セットで35万円(税別)。