防衛省が2018年度予算の概算要求で、新たに島しょ防衛用高速滑空弾と島しょ防衛用新対艦誘導弾の開発に向けた要素技術研究費を盛り込んだ。「高速滑空弾」は占領された島を奪還するため、標的の島に近接する島から攻撃するため、沖縄の「先島間」など想定して技術研究を図るという。防衛省・自衛隊が進める南西地域の防衛力強化や「離島奪還作戦」を念頭に置いている。ただ沖縄県内のほとんどの離島は避難計画は策定されておらず「住民の犠牲が前提になるのでは」(専門家)との懸念が残る中でミサイル研究が進められることになる。
「例えば与那国と石垣の間は約250キロある。そういったことを考えて島しょ部における作戦を効果的に実施する」「先島地域で防衛することを念頭に置いている」。島しょ防衛用高速滑空弾の技術研究について、防衛省関係者はこう明言した。
100億円を投じて、超音速で滑空するためのロケットモーターや飛翔体の技術研究を行う。防衛省によると、既に自衛隊が保有するミサイルよりも長い射程で、超音速を目指し、飛行経路を予測しにくくするために滑空させるという。
防衛省関係者は実際の開発や配備ではなくあくまで研究に向けた「例示」だと強調する。ただ18年3月に発足する水陸機動団が担う離島奪還作戦の実行前に、占領している外国軍隊への攻撃などが「念頭」だとしており、実際に開発されれば沖縄の離島で使用される可能性は高くなる。
77億円を求めた島しょ防衛用新対艦誘導弾はステルス機能、エンジンの耐久性向上などを研究するという。地対艦か空対艦かなど発射装置は決まっていないという。どちらにしても島しょ防衛の一環で「海上優勢」を確保するために研究する。
島しょ防衛を巡っては、宮古島と石垣島の陸上自衛隊配備計画で、ミサイル部隊は民間地域での展開も排除されていない。離島奪還作戦では水陸両用部隊と共に事故が相次ぐ垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの飛来も確実視される。そこに島しょ防衛の名の下に新たなミサイル研究が加わることになる。
元陸自レンジャー隊員で「ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン」(平和を求める元自衛官と市民の会)の井筒高雄代表は、先島での「局地戦」などを想定していると指摘。市民の避難計画も策定されていないとして「住民避難が考えられていない。犠牲になるのを前提にしているのではないか」と警戒感を示した。