世界遺産、環境管理が鍵 筑波大・吉田教授 体制の不備指摘


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遺産登録の実現性について講演する吉田正人教授=1日、那覇市の八汐荘

 世界自然遺産登録を目指す奄美・琉球諸島の生物多様性や今後の課題について考えるシンポジウム(日本弁護士連合会主催)が1日、那覇市の八汐荘で開かれた。講演した筑波大学大学院世界遺産専攻長の吉田正人教授は、照葉樹林からサンゴ礁までの「連続性」が重要であるにもかかわらず、海域が候補地に入っていない点や、米軍北部訓練場が隣接する本島北部地域は環境保全の管理体制が不十分だと指摘した。その上で今秋の国際自然保護連合(IUCN)による現地視察では「相当の注文が付くはずだ」との見解を示した。

 IUCNの専門家として、これまでに遺産価値の評価などに携わってきた吉田教授は、奄美・琉球諸島の価値について(1)陸上・淡水・沿岸・海洋を代表する生態系(2)生物多様性の保全上、重要な生息地-とし、これらが普遍的に存続できる管理体制を築けるかが鍵になるとした。

 保全上のための十分な面積を有し、開発などによる悪影響を受けていないかも登録の条件になると強調した。日本政府が提示する現行案では、北部地域は米軍施設の存在により七つに分断され、緩衝地帯も十分に確保できていない点を危惧。ドイツやイタリアでは米軍と環境保全上の協定を結び、遺産登録を実現した例があるとして、奄美・琉球諸島でも適用できないか模索する必要性を説いた。

 候補地に隣接した辺野古新基地建設の埋め立て土砂が、アルゼンチンアリなど特定外来生物が定着した地域から搬入される計画についても「世界遺産委員会や世界自然遺産保護会議の決議に反するのではないか」と懸念した。