アグー、優良遺伝子で改良 沖縄県が凍結精液の供給計画


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沖縄アグー豚の種豚候補豚=1日、今帰仁村(県畜産研究センター提供)

 沖縄の在来豚・沖縄アグー豚の改良促進を目指し、県が成育の早さや肉質がいい特性のある遺伝子を持つ精液を冷凍し、養豚農家に供給する計画を進めている。現在、遺伝能力を効率的に判定できるDNAチップの開発と優良種豚を選別する仕組みづくりをしており、早ければ来年度中にも農家に凍結精液を試験出荷する見通し。肉質で定評があるアグーだが、いい遺伝子を掛け合わせることでさらなる改良が期待され、関係者は「世界一おいしい豚肉づくりにつながる」と意気込む。

 研究は県畜産研究センター(今帰仁村)が行い、精子の冷凍保存技術と、2015年に解読された全遺伝情報を活用した効率的な育種改良法の確立が柱だ。

 牛は凍結精液の普及が進み、肉質や発育を重視した和牛改良の取り組みが進んでいる。

研究を進める県畜産研究センター主任研究員の親泊元治さん(左)と當眞嗣平さん=今帰仁村

 一方、アグーは肉の評価が高いものの、小さな群れの中で交配が進んできた歴史的経緯もあって繁殖力が極端に弱く、自然交配による増頭が中心だった。

 これまでの研究で、射精時の最初の50ミリリットルを活用することで精子の濃度を高められることを確認。メスに人工授精させる際に管を使うことで授精効率を高めた。

 精子凍結の過程では、流産や子豚の発育不良など、農家経営に大きな影響を及ぼしている病原体の除去や不活性化ができる。雄の精子が減る夏場でも種付け数の減少を抑えられ、出荷につながる頭数が増加し、農家の経営改善につながる。

 冷凍精液を安定的に利用できるようになれば、遺伝子の長期保存も可能になる。沖縄在来豚のアグーはブランド構築上も県外に持ち出すことができず、県内で口蹄(こうてい)疫(えき)などの家畜伝染病が発生すれば種の存続に関わる事態にもなる。

 凍結保存した精液を安定的に活用できるようになれば、伝染病が発生しても絶滅を防ぐことができるとして期待されている。

 県畜産研究センターの親泊元治、當眞嗣平両主任研究員は「アグーがいるのは沖縄だけで、優良血統の配布による改良の促進にやりがいを感じる。アグーのさらなるブランド力向上につなげたい」と意気込んだ。

英文へ→Okinawa plans to improve their Agu pig stock by freezing genetic material of select specimens