安慶田氏シンクタンク始動 前沖縄副知事 菅氏が祝電 県に困惑も


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「一般社団法人沖縄経済懇談会」の設立について説明する安慶田光男前副知事=6月、那覇市内

 教員採用試験の口利き疑惑を巡り辞任した沖縄県の安慶田光男前副知事が代表を務めるシンクタンクが13日、第1回シンポジウムを開催するなど活動を本格化させた。会には菅義偉官房長官からも祝電が届いた。安慶田氏はシンクタンク設立について水面下で菅氏と事前調整しており、その「蜜月ぶり」も目を引く。辺野古新基地建設問題を巡り県と政府が対立する中、安慶田氏は両者の間に入り、沖縄振興が滞らないように努めることが役割だと強調する。ただ翁長雄志知事周辺とは事前の調整は一切なく、県幹部の間には、新基地建設問題で県側のキーマンだった安慶田氏の動向に困惑する声もある。

 「観光発展に必要なMICEの予算も計上できず、来年度予算も国の直轄事業は増加したが、一括交付金は100億円以上カットされた」。安慶田氏は懇談会のあいさつでこう述べ、新基地建設問題での対立を背景とした沖縄関係予算の減額に懸念を示した。

 終了後、安慶田氏は「今の県政が駄目だとは言っていない。ただ、ずっと闘って、今後どうなるのかが見えない。着地点を見い出すべきだと言っただけだ」と自身の立場を説明した。

 「ずっと闘って」と県と政府の関係を評した安慶田氏だが、副知事時代は自身が知事の懐刀として、辺野古新基地建設問題を統括していた。菅氏との関係はその時に築いたものだ。基地問題で知事が表舞台で政府を強く批判する中、非公式に菅氏と会談し、予算交渉などを担った。“泥をかぶる”仕事ができることでも知られる。

 この日、安慶田氏は辺野古新基地建設問題に関する自身の立場には言及せず、「着地点を見い出すべきだ」と評すにとどめた。

 副知事辞任後、初の“表舞台”復帰となった安慶田氏。この日のシンポジウムの前に、県幹部は菅氏とのパイプを持つ安慶田氏が「どんな発言をするのだろうか」と気をもんでいたが、安慶田氏が表立って県政を批判する立場に翻ることはなかった。ただ、知事周辺は「安慶田さんが自身のパイプで役割を果たしたいことは尊重するが、知事が辺野古の問題で態度を変えることは何があってもない」とくぎを刺した。