2020年から始まる教育改革。講演会「これからの大学入試はなぜ変わる?どう変わる」(オーシャン・トゥエンティワン主催、琉球新報社、カンコー教育ソリューション研究協議会、近畿日本ツーリスト沖縄共催)が18日、浦添市産業振興センター結の街であり、保護者ら150人が参加しました。講師の山下真司さんは教育が変わる理由、子どもへの向き合い方について話しました。この教育改革に学校現場はどう対応するのか。これからの国語教育の実践セミナー、開邦中学・高校での「新報まなラボ」の活用実践例を紹介します。
「アメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」「今後10~20年で47%の仕事が自動化される可能性が高い」と言われている。いろんな仕事がロボットに奪われるというニュースもあるが、悲しまないでください。これは時代の変化。子どもたちがロボットに使われるのではなく、ロボットを使いながら一緒に仕事をしていくことが求められている。
多様性許容する社会
日本の人口は2060年には8700万人に減ると予測されている。グローバル化は進み、外国人と一緒に働くことも日常的になる。人工知能など技術の進化にも向き合わないといけない。
私たちの育ってきた社会はとにかく「競争」。受験戦争という言葉に象徴されるように1点でも多く知識を習得しないといけなかった。でも社会が変わった。これからは「共創」だ。新しい価値を創造し、異文化の中で多様性を許容していく社会だ。教育の在り方も変わらないといけない。
大学も高校も入試の在り方も三つ一緒に変えるのが今回の改革のポイント。共通一次からセンター試験というレベルの変化ではない。
新しい学力
私たちの時代の学力は知識・技能が問われたが、これからの学力は加えて思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性が求められ、入学者選抜ではこの新しい学力が問われる。
現行の大学入試センター試験は全教科マークシート方式で答えを一つ選ぶ形式のため、消去法で解を類推することができた。20年からの大学入学共通テストはこれが変わる。答えが一つではなく、該当する選択肢を全て選ぶようになるというのが大きなポイント。
二つ目は国語、数学で記述式が3問程度導入される。地歴、公民、理科も24年度から記述式の導入が検討されている。
英語も変わる。読む、聞く、書く、話すの4技能を民間の検定試験を活用する(23年度までは大学入学共通テストと併用)。
一部の大学では既に入試が変わり始めている。京都大学は16年度から特色入試を取り入れた。研究者に求められるのは新しい物事を探求しようとする意欲だが、それは従来のペーパーテストだけでは見抜きにくい。能力に加えて志を評価できる選抜方法に変えた。副学長は「特色入試で求めるのは基礎学力に加えて学びの足跡と学びの意欲」と語っていた。まさに皆さんの子どもたちは今一生懸命、学びの足跡をつけている。その足跡によって次の学びの意欲を醸成している。だから今が大切なんです。
親は「支援者」に
保護者には「今日何があったの?」と出来事を聞くのではなく、「その活動を通じてどう思ったの?」と聞いてほしい。子どもたちが問題意識を持てるように、問い掛けの工夫が大切。
皆さんにできることは保護者から自立支援者というスタンスに変わり、子どもに向き合うこと。自立支援者になるためは子どもたちの可能性を信じて任せる。子どもたちのやりたいことを応援することが必要だ。
親が先回りして問題をつみとってしまうことがあるが、その問題は子どものもの。まずは子どもの話をちゃんと聞いてほしい。同じ失敗をしてほしくないなど、どうしても伝えたいときは「私だったら」と「私メッセージ」で伝えよう。
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山下真司(やました・しんじ)
リクルートマーケティングパートナーズが発行する高校のキャリア教育、進路指導専門誌「キャリアガイダンス」編集長。沖縄県教育委員会「キャリア教育支援事業」評価検証委員。