【島人の目】変わりゆくロサンゼルス


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 「アンタイ・ジェントリフィケーション=変わりゆくロサンゼルス」と題して米紙ロサンゼルス・タイムズの記者、スティーブ・ロペスさんがコラムを書いた。ジェントリフィケーションとは辞書で「上流階級化」とあり、アンタイと付くので、それに反対する人々のことになる。

 ロサンゼルス・ダウンタウンの東側にボイルハイツというところがある。今では90%以上がラテン系の住民が住む地域となっている。かってはユダヤ系、ロシア、日系、ポルトガル、クロアチア、セルビア人など中産階級が居住する地域であった。ロペスさんのコラム(7月23日付)は逆差別的要素を持った記事としてちまたを賑(にぎ)わせている。

 ロペスさんは毎週日曜版にコラムを書くのだが、今回は、白人2人とラテン系1人が3カ月前にボイルハイツにオープンした「コーヒーショップ」に対する地域住民による嫌がらせを批判している。6月には覆面した黒装束の男がナイフを突き付けて、ショップ・オーナーの1人に「お前は白人だ。人種差別主義者だから、ここでビジネスをしてはならない」と命じた。また、ある日は店のフロントガラスがめちゃめちゃにたたき割られ、エアコンが壊されたこともあった。

 ロペスさんはオーナーの1人に理由を聞いた。白人の1人が文句を言う地域の人々と会話をしたかったが、「『お前は人種差別主義者だ』と言われてやめた」と話した。だが、彼らはショップを今閉店することはできない。リース(賃貸契約)は4年で、彼らのビジネスは始まったばかり。地域に協力的な人もいるし、なじみ客もできた。とても繁盛しており、評判も良く、閉店したら困るとの意見が多い。

 ご存じの通り、カリフォルニア州はもともとメキシコの領土であった。米墨戦争でアメリカの一部(1848年)となり、ロサンゼルス一帯はいわゆる上流階級化して白人社会へと変遷した。それから第2次大戦後の移民法改正で多くのメキシコ人が、ロサンゼルスかいわいに居住するようになり、他の人種は地方へと移り住むようになった。

 あらゆる人種が交ざり合って住むアメリカ社会。人種間抗争は解き明かすことが難しい問題だが、最近はトランプ大統領の政策がそれに輪をかけたようで嘆かわしい。

 (当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)