「何でも大嫌い」な人とどう向き合う? 演劇で対話力育成 北中城中、生徒らが体験講座


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身を乗り出すようにして、アンチ大魔王(中央)に自分たちの好きなものを伝える生徒ら=9月29日、北中城村の北中城中学校

 「何でも大嫌い」の“アンチ大魔王”にどうやって「好き」と言わせるか―。沖縄県北中城村立北中城中学校で9月29日、劇団チームスポットジャンブル(宜野湾市)を招いた演劇ワークショップが開かれ、グループに分かれた1年生が、劇団員が演じる大魔王の心をくすぐろうと自分たちが好きなものの良さを全身でアピールした。

 同劇団はコミュニケーション能力の育成を目的に、県内各地の学校などで同様のワークショップを展開している。今回のプログラム“アンチ大魔王”は、グループごとにお菓子や遊びなど自分たちの好きなものを決め、事前に配布された大魔王のプロフィルを参考に大魔王を説得する戦略を立てる。チームが一丸となって2分間の“対戦”で大魔王と対話し、「好き」と言わせれば生徒らの勝ちだ。

 「この世の全てが大嫌い」と宣言する大魔王のルールは「本当に心動かされたときだけ『好き』と言うこと」で、勝敗は展開次第。生徒らは身ぶり手ぶりを交えて懸命に良さを伝えたが、先に登場した4番目までのグループは説得しきれず連敗した。

 5番目に登場したのは、好きな余暇として「おしゃべり」を選んだグループ。笑顔で「おしゃべりすると楽しいよ」「仲良くなれるよ」と口火を切った生徒らに大魔王は「しゃべる人がいない」。生徒らは「私が友達になる」「(大魔王が自宅で世話をする)金魚の飼い方を教えて」と畳み掛け、思わず顔をほころばせた大魔王に「大魔王とおしゃべりしたい人?」「はーい!」と観客役の他グループも巻き込んで、大魔王に「好き」と言わせた。

 メイン講師を務めた役者のナツコさんは「社会には価値観や意見が違う人がたくさんいる。大魔王もそんな人だが、皆さんは最後まで向き合い、対話を諦めなかった。この経験を今後に生かして」と語り掛けた。知念愛海さん(12)は「自分の意見は大魔王に反論されたけど、友達が違う意見を出し、『なるほど』と思った」とグループならではの対戦を振り返り、充実した表情を見せた。

 劇団を招いた担任の松浦雅子教諭は「生徒全員が参加し、言葉を伝え合って課題を乗り越えていった。子どもの主体性を引き出す方法を、自分も学ばせてもらった」と語った。