無償で電気工事しつつ歩く 触れ合い楽しむ仲宗根さん 空港→辺戸岬 170キロ


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電気工具などが入った約40キロあるキャリーカートを引きながら歩く仲宗根巌さん=2日、国頭村与那

 【北部】那覇空港から国頭村の辺戸岬まで、約170キロを歩きながら、電気工事を無償で行う旅に挑戦した人がいる。沖縄市で電気設備や空調設備工事を請け負う「Banana concept(バナナコンセプト)」の取締役、仲宗根巌さん(41)だ。工事の工具などを入れた約40キロのキャリーカートと約10キロのリュックサックを背負って歩き続け、3日には辺戸岬に到着した。その間、電気工事を行った人々と交流した仲宗根さん。到着後は旅の疲れも見せず「人と人とのつながりを大事にしたい、という思いが一層強くなった」と話した。

 仲宗根さんは、2005年にバナナコンセプトを立ち上げ、現在は従業員8人を抱えるまでになった。しかし仕事優先の日々の中で「仕事は大事だが、それだけではない。一度立ち止まって、自分自身と向き合いたい」との思いから、辺戸岬まで歩くことに挑戦を決めた。

 本島西海岸をコースと決め、出発前には会員制交流サイト(SNS)を通じ、徒歩の旅を行うこと、その間に無料での電気工事の注文を呼び掛けた。人々との交流をもう一度、肌で感じたいとの思いからだ。

 那覇空港を出発したのは9月19日。その間、電気工事と関連する調査を合わせて6件を請け負い、これまで培ってきた技術を通して、出会った人たちと交流を深めた。恩納村でテレビのアンテナなどを修理した際、依頼主が「おじい、おばあ、テレビがまた映ったさ」と仏壇に報告していた姿が胸に残っているという。

 辺戸岬に到着した時は、会社の従業員も駆け付けた。「何事もこつこつやっていけば、たいていのことは達成できる」と充実した表情を見せる仲宗根さん。約半月の触れ合いの旅を通し「お金で買えないものを与えてもらった。仕事以外の時間も大切にしながら、仕事ではお客さまに信頼されるような会社づくりに努めたい」と気持ちを新たにしていた。

那覇から歩いて辺戸岬までたどり着いた仲宗根巌さん(後列中央)と仲宗根さんが引いてきたキャリーカート(手前中央)ら=3日、国頭村の辺戸岬(仲宗根巌さん提供)