人出20万人余の商機失う 台風で沖縄の産業まつり、初の全日程中止 最大イベント消え、関係者落胆


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
沖縄の産業まつりに合わせ開かれた県外スーパーのバイヤーと県内企業との商談会=26日、沖縄県那覇市

 沖縄県那覇市で27日に開幕予定だった第41回沖縄の産業まつり(同実行委員会主催)は、台風22号の接近により、40年の歴史で初めて3日間の全日程が中止となった。毎年20万人以上の人出でにぎわう一大産業イベントとして、沖縄県内のものづくり企業にとって新製品のマーケティングや自慢の特産品を発信する場となっているだけに、中止による機会損失は大きい。準備に取り組んできた企業や団体は「残念」と肩を落とした。

 昨年は40回記念大会で過去最大規模の552の企業や団体などが出展し、延べ24万2500人が訪れた。実行委事務局の県工業連合会によると、3日間の合計で1億8千万円の売り上げがあった。

 今年も那覇市の奥武山公園と県立武道館を会場に538の企業や団体が出展し、昨年と同程度の売り上げが見込まれていた。早い段階で中止を決めたことから出展関係者に大きな混乱はなかったものの、県内外からは中止を惜しむ声が寄せられたという。

 県工連の我謝育則事務局長は「出展者にとって商品を披露する機会がなくなることにもなる。多くの人に認知されている産業総合展を開催できず申し訳ないが、次年度に期待してほしい」と話した。

 県内34商工会が軒を連ねる特産品フェア「ありんくりん市」は、各地のむらおこし事業などで開発された特産品の販売に長蛇の列ができる恒例の人気エリアだ。

 その出展商品の中から優れた商品を選ぶ第20回商工会特産品コンテストで、食品の部最優秀の県知事賞を獲得したのが三倉食品(西原町)の「沖縄低糖質麺」。佐久間健治社長は、銀行主催の勉強会に参加して商談会や商品紹介のプレゼンテーションの練習を重ねるなど、商機をつかむ準備も怠らなかったという。

 産業まつりでは3日間の売り上げ目標を500万円に定め、1200食分を用意していた。「普段聞けないような消費者の声が聞け、改良につながり励みにもなる。ビジネスの面だけではない、いい機会だった」と惜しんだ。

 那覇市の自治会館会議室では26日午後、産業まつりに合わせて来県した県外スーパー7社と、県内食品メーカー23社との合同商談会が開催された。商談会を主催する沖縄物産企業連合(那覇市)の羽地朝昭社長は「産業まつりの中止は残念だが、思いの丈をバイヤーに伝えて商談してほしい」と呼び掛けた。

 県産品のアンテナショップ「沖縄宝島」を展開する同社は、阪急オアシス(大阪府)やユニー(愛知県)といった「地域一番店スーパー」のバイヤーを招き、産業まつり会場の案内や事前の商談会で県産品の県外売り込みを図っている。だが、台風で産業まつりの視察がなくなったため、27日は県内量販店の販売状況や観光施設を視察する日程に振り替えた。

 ハローデイ(福岡県)の戎谷秀彦営業副本部長は「商品のサンプルは取り寄せられても、現地に来ないと分からないことがある。産業まつりは期待していたので残念だが、その分商談会の内容を深めたい」と県内企業との商談に臨んだ。