日本に広く分布するオオハリアリが北米に侵入後、日本では食べない昆虫を捕食するようになり、在来種を駆逐するなど大きな影響を与えていることが日米共同グループの研究で分かった。メンバーの辻和希教授(琉球大)は「外来生物は原産地の状況からは予測できない影響を侵入地の生態系に与える可能性がある」と警鐘を鳴らす。3日、英国科学雑誌サイエンティフィックレポーツに掲載された。
オオハリアリは19世紀ごろ貿易の荷物と共に米国に侵入したと見られる。森の朽ち木の中や地中に住み、日本では毒針を使ってシロアリを狩って食べる。米国では森の中で大増殖し、森を歩く人が刺されるなど問題になっている。
研究グループは生態系に悪影響を与える侵略的外来種になるのかを餌に着目して調べた。分析に使ったのは、第2次世界大戦後の核実験で多量に放出された放射性炭素14Cだ。14Cの大気中濃度は1963年が最も高く、その時代に育った木や、それを食べるシロアリの体内に多く含まれる。主にシロアリを食べる日本のオオハリアリに比べて米国のものは14Cが格段に少なく、シロアリ以外の昆虫も食べていることが分かった。
辻教授は「これほど食性が変わるのは珍しい。歴史上、北米にはオオハリアリの毒に類するものがなかった。現地の昆虫は経験したことのない毒の攻撃を受けて捕食されている可能性もある」と指摘した。
※「14C」の「14」は左上