文言修正し総意実現 海兵隊「撤退」→「県外・国外」 米兵死亡事故県議会抗議決議


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 在沖米海兵隊員による飲酒運転死亡事故に対する意見書・抗議決議は、27日の米軍基地関係特別委員会(軍特委)では文言を巡って折り合わず、本会議では与党が提案する意見書・抗議決議が可決される公算が大きかった。翌28日には一転して与野党、中立の各会派が「退席なしの全会一致」を追求して調整を繰り返し、与野党双方が歩み寄る形で県議会の総意を示すことにこぎ着けた。

 27日の軍特委では与党会派が「在沖米海兵隊の撤退」を盛り込むよう主張したが、野党の沖縄・自民は「その文言では乗れない」と削除を求め、物別れに終わった。

 28日の11月定例会本会議前に開いた議会運営委で、自民会派から「できるだけ全会一致を目指したい。こちらが提案する意見書、決議案を改めて軍特委で諮ってほしい」と要望が上がり、与党会派が応じた。

 自民側は文案の中で(1)米軍人・軍属による凶悪犯罪発生時の司令官と上司の更迭(2)県、日米両政府の三者による協議機関の設置―を盛り込んでいた。自民会派の一人は「軍特委の採決に持ち込めれば、社民や共産を含む他会派も反対する内容ではない」と述べた上で、「与党が主張する在沖海兵隊の撤退は実現性に乏しい」として、自民会派の文案での全会一致に自信を見せていた。

 自民会派の思惑とは別に、28日の軍特委開会前に調整を重ねる間に双方が歩み寄る機運が徐々に高まった。自民側は与党が掲げる「在沖米海兵隊の撤退」の代わりに「早期移転」の文言を提案したが、与党会派は「辺野古移設推進につながる」として拒否。中立の公明会派から「『早期の国外、県外への移転』ではどうだ」と提案が上がり、合意に至った。

 与党会派の一人は「われわれからすると『撤退』と『国外、県外移転』は何ら変わらない。自民側がこの文言を良しとしたのが驚きだ。撤退を求める県民意思を無視できなくなっているのではないか」と語った。

 一方、自民会派の一人は「撤退と国外、県外移転では安全保障上の意味合いが異なる。可決した文言は日米特別行動委員会(SACO)合意の範ちゅうだ。三者協設置などわれわれが提案した要求事項が可決された意義は大きい」と述べた。

 与野党間で歩み寄った文言の解釈に違いを残しつつも全会一致で決議、意見書を可決した。公明会派の県議は「再発防止に向けて効果あるメッセージを政府に発するためにも、全会一致で可決できてよかった」と胸をなで下ろした。(当銘寿夫)