21歳、非行から道開く 仲里さんプロに挑む ボクシングで恩返し


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 少年院を2度経験した仲里健太さん(21)=平仲ジム=は、プロボクサーになる夢をかなえるため、9日に豊見城市の平仲ジムで行われるプロテストに臨む。道を開いてくれたのは「ボクシング王国沖縄」を築き上げ、先月他界した金城眞吉さん(享年73)だ。仲里さんは「強くなって先輩や仲間と第二のボクシング王国を築くことが恩返しだ」と表情を引き締める。

プロテストを前日に控え、サンドバッグを打ち込む仲里健太さん=8日夜、豊見城市真玉橋の平仲ボクシングスクールジム(又吉康秀撮影)

 仲里さんは小3で野球を始め、中学はヤングリーグに所属した。十数キロ離れた練習場所に自転車で通ったが試合には出場できず、次第に足が遠ざかった。目標を失い自暴自棄になった仲里さんは恐喝や器物損壊、暴走行為に走り15歳で沖縄少年院に入った。

 少年院では法務教官に反発し、投げやりな日々を送った。4カ月延びた末の出院日でさえ「暴走をやり残した。また戻ってきます」と宣言。再び非行を重ね、18歳で少年院送致が決まると「やり直そう。変わるべきは自分だ」と誓った。

 余暇時間で見たテレビで、ボクシングの元世界ヘビー級王者マイク・タイソンさんが少年院出身と知った。「少年院上がりでも道が開けるんだ」。ボクシングへの興味が高まった。

 出院直後の2015年12月、中学時代の恩師と金城さんを訪ねた。「プロボクサーになりたい」と思いをぶつけると「ガードが堅いボクサーが強い。それだけ覚えとけ」。そう言った金城さんは元世界王者でボクシングジムを営む平仲信明さん(54)に電話をかけ「面倒を見てほしい子がいる」と切り出した。平仲ジムの練習生となると、金城さんは時折ジムに顔を出し指導してくれた。肺がんを患い闘病に入った後も電話をかけ気に掛けた。仲里さんも金城さんを見舞い、交流を重ねた。平仲さんは「金城監督は彼の頑張りが少年院の子たちにも勇気を与えると思っていたのだろう」と思いをはせる。

 9日は中学時代の恩師や少年院で向き合ってくれた元法務教官も会場に駆け付ける。仲里さんは「世話になった方々の前で重圧もあるが、教えてもらったことをしっかりと出したい。眞吉さんの仏前でいい報告をしたい」と合格を誓った。(新垣梨沙)