(4)「ウーマンラッシュアワー」の漫才に共感しましたか?しませんでしたか?


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 久緒

 琉球新報のツイッターを利用して読者の皆さまにニュースについて意見をお伺いする「琉球新報ニュースでアンケート」の4問目は、2017年12月17日夜にフジテレビ系で全国放送された番組「THE MANZAI 2017」で、吉本興業所属のお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さん、中川パラダイスさんが披露した漫才の内容について「共感しましたか、しませんでしたか」と問う質問でした。

 「ウーマンラッシュアワー」はこの番組で沖縄県名護市辺野古や東村高江の基地建設問題や原発などの状況を強烈に風刺する漫才を披露し、インターネット上でも反響が広がりました。

 読者の皆さまにツイッターでアンケートを呼び掛けたのは12月22日(金)でした。今回も3回目と同様、投票期間を3日間の設定にして、週末を挟んで12月25日(月)の午後5時まで意見を募りました。アンケートに答えていただいた読者の投票は、過去4問の中で最高得票数の605票。「ウーマンラッシュアワー」が披露したこの風刺漫才の反響の大きさ、関心の高さがうかがえる結果になりました。

 

 結果は(ア)の「共感した」が460票(76%)、(イ)の「共感しなかった」が145票(24%)で(ア)の「共感した」が7割以上を占めました。

 

 正直、言わせてもらえれば、もっと賛否両論が拮抗(きっこう)しているかな、と思っていたので「共感した」が7割も占めたのは驚きでした。

 

 今回もツイッターのコメント欄で漫才の感想などを書いていただきました。そのうち漫才について触れたコメントの一部を以下、順不同で紹介します。

 

 「賛否ではなく『関心を持て』と問題提起した切り口が良かったのだと思います。そしてテンポの良さで当たり前のことが言えなくなっている主要メディアの『忖度』(そんたく)を痛快に斬ってくれました。 無防備に笑う人たちに、当事者意識を回避しそれを成り立たせてるのは『お前らのことだ』と。」

 

「全然共感しない。反対は誰でもできる。いつも思うが、反対派の政治家から具体的な案がない」

 

「あのネタ、普段お笑いなど見ない方々が見て共感されています。沖縄の基地問題知らなかった方々が知るきっかけにもなっていると思います。私も佐世保で米軍がある街に住んでいます。被害は沖縄と比べると雲泥の差があると思います。無理矢理米軍基地が作られる事が非情な事だと広く知られてほしいです」

 

「驚きはしましたが共感とは異なります。 漫才や物まねを通し、強いものへの疑問、無関心な人たちへの問題提起としてできるようになれば良いと思います。 ただ余りの『持ち上げすぎ』は逆に怖いです」

 

「沖縄に目が行きがちだけど、時間を割いていたのは村本さんの地元、福井の原発でしたね。沖縄や熊本・東日本大震災の被災地についてもよく勉強しているのが分かる漫才でした」

 

「私は、東京在住ですが沖縄の人達の人柄や空と海に惚れて35年になります。学生の時には知らなかった沖縄の人達の苦しみ怒り等を大人になって報道等で知ってからは、自分なりに知人にも伝えてますが他所の事としてしか捉えて貰えないのが現状で悔しいです。米の方が大事なら国会の隣に基地を造ればいい」

 

「共感しました。いじめ問題にしても、多くの傍観・無関心が原因でもある。村本さんが朝生で主張しても、夜中で睡眠中、政治に関心あっても諦め・反発から観ない人もいます。今のお笑いは、人の欠点を指摘したり、顔や頭をたたいたりが多く笑えません。彼らの方がよほどいい」

 

「ハッキリ・キッパリ思ってる事や事実をありのままネタにして頂いて◎です」

 

「基地反対派の迷惑行為やメディアの偏向にまで踏み込んでくれてたら感心したが、そこまでの度胸は無かったみたいね」

 

「沖縄問題をお笑いのネタにされたという意味で不快に思っています。 沖縄の人間はあのネタの内容について自分達の問題だから解りやすいと感じたのだと思います」

 

「沖縄の人は沖縄問題を取り上げてくれた!と歓迎ムードですが、他地域の人は『沖縄問題=ウザイ』と耳を塞ぐ人も多くいるのも確かだし、沖縄側が思っているほどあのネタの内容が『心に刺さっている人』は少ないと思います」

 

「沖縄県民ですが表面的な知識だけでネタにされ不快に思います」

 

 

 

 「新報ニュースでアンケート」で、この質問をするに当たっては、読者の皆さまにどのように問いを投げ掛けようかいろいろ迷いました。漫才ということもあるので、当初は「笑えた」「笑えなかった」というような選択肢で問い掛けようとも思いましたが、同僚からアドバイスを受け、「共感したか、しなかったか」という質問に落ち着きました。

 

 漫才のアンケートで「共感した」か「共感しなかったか」という選択肢は当初、少しそぐわない感じもしました。もちろん「笑い」なのはその通りですが、あの17日夜の漫才を見ると2人の、特に村本さんの熱い思いやメッセージを感じました。笑いながらも心動かされるという感じでしょうか。インターネットでは「涙が出た」「漫才を見て初めて泣いた」などの意見も見られました。そこで共感したかどうかを問う方がこの漫才の意見を聞くアンケートでは適しているだろうと判断して、「共感した」「共感しなかった」という選択肢に決めました。アンケートを終えてみてこの選択肢で良かったと思っています。

 

 この漫才を見て、演芸集団FECの企画・演出・脚本を担当するお笑い芸人の小波津正光さんのインタビューを思い出しました。琉球新報の2006年8月14日朝刊の文化面(文化)で掲載された小波津さんのインタビュー記事です。以下、少し引用します。

 

『〈東京で三十歳の誕生日を迎えた二年前の八月十三日、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した。二日後、東京の観客の前で同事故のネタを披露した〉

 東京は人が多くて騒がしいけど、戦闘機やヘリが飛んでいないから空が静か。沖縄って特殊だったんだなあと気付いた。東京の人はシーサーとかゴーヤーとかは知っているが、米軍基地のことは知らない。沖縄で新聞を広げれば必ず基地の話題が出ているが、東京はそうではない。ヘリ事故も東京では報道されない。怒りと同時に、とりあえずこの事故を知らせたいと思った。知らないことを逆に利用して笑いをとってやろうと考えた。

「アテネで聖火が燃え上がっているころ、沖縄では米軍のヘリが燃え上がってるわけさぁ!」と、ヘリ墜落を大きく報じる琉球新報を舞台上で広げ、お客さんに、こんこんと説教し、相方が止めるというネタをやったんです。東京のお客さんは、同じ日付の新聞がまったく違うから不意をつかれて「何これっ!」って大笑いだった。』

 

 その時の舞台を直接見たわけではありませんが、小波津さんは「米軍ヘリコプターが大学に落ちたのに、なぜ東京では大きく報道されないのか」と、沖縄県民の受け止めと大きな違いを感じ、その違和感をそのまま舞台でぶつけたのではないでしょうか。小波津さんが真剣な表情で声を荒げて訴える姿が「笑い」につながったという意味では「ウーマンラッシュアワー」の今回の漫才と近いものがあるかもしれません。 

 

 今回の「新報ニュースでアンケート」の結果については、2017年12月26日の琉球新報の26面で紹介しています。ぜひご覧ください。

在沖米軍基地や原発問題などについて風刺するネタを披露したウーマンラッシュアワーの村本大輔さん(左)と中川パラダイスさん(吉本興業提供)