30歳でようやく世界への扉に手が届いたプロボクサー、OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級1位の小谷将寿(平仲ボクシングスクール)が13日、同級王座決定戦でチャンピオンのカルロ・マガレ(フィリピン)に挑む。ボクサーとして若くないが「20代の自分より今が強いと確信している」と言葉に自信がにじむ。プロ10年目。家族や友人、世話になったコーチらの顔を浮かべながら「世界を目指して来た夢はもう、自分だけの夢じゃない」とビッグチャンスに懸ける。(嘉陽拓也)
9日の平仲ジム。10ラウンドのスパーリングを終え力を出し切った小谷が座り込む。「(リミットまで)あと3キロっすけど、大丈夫っす」。1カ月で15キロの減量。追い込み時期は体が重い。ゆっくりとリングから降りると、レイコーチとボディー打ちを確認しつつ、二つのストーブの間で2枚の毛布をかぶる。少しの休憩の後、手を借りて立ち上がり、また打ち込んでいった。
毎試合100パーセントの力で挑んできたつもりだが、このタイトル戦は気合の入りようが違う。勝てば4月に防衛戦も予定されており、その先の「世界」が待っている。
「対戦相手のことを一日中考え、夢でもみる。携帯の待ち受け画面も。恋人かって感じ」
可能ならば昨年11月、沖縄尚学高校時代の恩師、金城眞吉さんが亡くなる前にベルトを取りたかったが「やっと頂いたチャンス。負けたら次はない。だから勝って恩返しです」と力がこもる。
沖尚時代の仲間とは忘年会を続けており、同級生でプロ野球ヤクルトの比屋根渉も参加する。昨年末は仲間から「比屋根の次はお前の番だな」とエールを送られた。王者になれば「比屋根とも肩を並べられる」と、友の活躍も刺激にしている。
「県内所属のプロでは一番おじさん。体力では若い選手に負けるが、技術とキャリア、勝負強さでは負けない。自分は一番脂が乗っている」「KOでも判定でもカットによる負傷でも何でもいい。とにかく最後に勝つ」と強く決意する。
13日は、超接近戦を得意とする相手に対し、小谷が自分の距離で迎え撃てるかが鍵の一つ。ともにパンチ力があるだけに、激しく打ち合う攻防が見られそうだ。